初めて人生について考えさせられた新作映画
――そのとき一緒に女装された事務所の先輩・松坂桃李さん、相葉裕樹さんとは、映画『王様とボク』で再共演されました。しかし、今回は初主演という立場ということで、プレッシャーのようなものがあったのでは?
主演として、みんなを引っ張っていこうということに対し、どこか余裕がなかったのは間違いありませんね。現場では役者のみんなと会うよりは、スタッフさんとのやりとりが多いし、いかんせん僕が演じたモリオが体は18歳でも、心が6歳のままという設定なので、大人の対応をとることができなかったのが、今となっては悔しいですね。まだ、僕自身、撮影中は役に引っ張られてしまうんですよ。だから、今回はカメラの前で、モリオとして生きることしか考えることができなかったんです。たとえば、今「サマーレスキュー~天空の診療所~」で、すぐに舌打ちするような最近の若者風な役を演じているんですが、現場ではみなさんをイラッとさせたり、どこか人当たりが良くないと思うんですよ(笑)。あと、カメラマンさんに写真を撮ってもらうときにも、笑い顔が引きつっているみたいな。
――ちなみに、本作に主演されたことで、俳優“菅田将暉”として学んだことがあれば教えてください。
初めて、自分の人生について考えさせられました。僕は大人なのか、それとも子供なのか。来年20歳なので、成人になる準備を始めたんですが、プライベートも充実させたいですね。「ドリトル」の撮影の合間に、小栗さんに「お前、人生楽しいか?」と聞かれたんですが、僕は「お芝居(は楽しい)」としか答えられなかったんですよ。でも、小栗さんが求めていた答えは、それじゃない。そして、生き生きした表情で「俺は楽しいよ!」と言われていたのを見て、「将来、こういう人になりたい」と思ったんです。そのことを『王様とボク』の撮影中に思い出したんです。ちょっとした意識の変化にすぎないと思うんですけど、あの小栗さんの言葉で自分の気持ちに正直になれたと思うんです。今までは仕事もプライベートもどうしていいか、よくわからなかったこともあり、それが溜まっていて、体を壊したりしていたんです。わがままになったとも言えるかもしれませんが、おかげであれ以来、今日まで楽しく生きられています。
2012.09.21(金)
text:Hibiki Kurei
photographs:Shigeki Yamamoto