これが陶芸? これが茶碗?
会場を見渡すと、さすが陶芸大国というべきか、今展でも使用されている素材には陶(セラミック)がもっとも多い。だがそれらの作品が必ずしも、日本人の慣れ親しんだ「器」の形を取るわけではない。
波打つレースのような装飾に覆われた白い骸骨(スカル)、宗教的なシンボリズムを感じさせるレリーフや立体からなる青木克世の作品は、近未来SFやホラー映画など、現代のある「気分」と通底するイメージを喚起している。
左:青木克世/展示風景 撮影:渡邉修
右:青木克世《Torolldom》2010年 撮影:大谷一郎
猪倉高志の立体は、壺や鉢など、いわゆる「工芸」的なサイズで、作品によっては蓋付きの容器としての形を取っている。だがエドワード・ウェストンによるモノクローム写真の名作、「オウムガイの貝殻」を思わせる有機的な曲線に、恐ろしいほどシャープなエッジを立てた、彫刻作品として自立している。
展示風景 撮影:渡邉修
右:《かげを纏うかたち 2011-3》2011年 撮影:大屋孝雄
茶の湯が盛んな金沢らしく、茶道具の核となる茶碗を展示しているのは、江戸時代から加賀藩の手厚い保護を受けて発展した大樋焼の、十代大樋長左衛門の長男、大樋年雄。またより明るく軽やかな竹村友里もいる。
右:竹村友里《盌「瞑想」》 2011年
異色なのは、マンガ『へうげもの』をきっかけに登場してきた若手作家の中の1人である桑田卓郎だろう。ポップな色彩と、長く茶碗の見どころとされてきた高台近くの釉薬の変化である「カイラギ」を、極端に誇張した茶碗で知られるが、今回は同じ技法を用いて作られた、より大型の作品が出展されている。
左:展示風景 撮影:渡邉修
右上:《黄緑化粧白金彩梅華皮志野垸》 2011年(参考画像)
右下:《茶垸》 2009年
右上下ともに (C) Takuro Kuwata courtesy of Tomio Koyama Gallery 撮影:市川靖史
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2012.06.23(土)