旅の楽しみのひとつに、個性豊かな地方の美術館を訪れることを挙げる人も多いだろう。日本国内にはユニークな展示や企画展で評価の高い美術館がいくつもある。今回はそうした美術館が企画する注目の展覧会を取り上げてみたい。

 まず紹介したいのは、静岡県・三島のヴァンジ彫刻庭園美術館で開催される「庭をめぐれば」。この美術館の特色は、豊かな緑に恵まれた庭の存在。広々した庭園を巡りながらアートを楽しむ体験は都会の美術館では得難いものだ。

 開館10周年を記念して開かれるこの展覧会では、この「庭」をテーマに日本の現代作家19組の作品が展示される。参加する作家は草間彌生、奈良美智、川内倫子など国内外で評価の高いアーティストばかりだ。古くから日本人にとって庭は日常生活の一部であると同時に、季節の移ろいを感じたり、瞑想的なひとときを過ごす場であったりと、精神的な意味を持っている。この展覧会はそうした「庭」の持つ表現の可能性を現代アートを通じて再考する試みにもなっている。

 なおヴァンジ彫刻庭園美術館がある「クレマチスの丘」にはベルナール・ビュフェ美術館やIZU PHOTO MUSEUMも併設されている。IZU PHOTO MUSEUMでは写真家・荒木経惟がこれまでに出版した400冊以上の写真集のほぼすべてを展示する「荒木経惟写真集展 アラーキー」が開催中だ。

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2012.05.05(土)