アートと建築、自然が融和した美しい美術館 via Louisiana Museum of Modern Art

 デンマークのコペンハーゲンの北35キロにあるフムレベック。この町には「世界でいちばん美しい美術館」とも称されるルイジアナ近代美術館がある。収蔵されている近現代アートの質の高さだけではなく、自然と建築が調和した景観の素晴らしさもこの美術館の大きな魅力だ。アートと自然が一体化した唯一無二の体験を求めて、多くの人々がここを訪れている。

 現在この美術館では、デンマーク出身のアーティスト、オラファー・エリアソンの個展を開催中だ。エリアソンは1967年生まれ。彼の代表作の多くは水や光を伴う自然現象、建築などから着想を得た体験型のインスタレーションだ。そこには人間の知覚や認識のあり方を問い直すような深い洞察が秘められている。2003年にはテート・モダンのタービンホールで人工の太陽と霧を用いたインスタレーション作品「ザ・ウェザー・プロジェクト」で高い評価を得た。

展示室内に人工の小川が流れる大作「リバーベッド」(2014) via Louisiana Museum of Modern Art

 今回の個展は3つのセクションで構成されている。中心となるのは、この展覧会のために制作された新作インスタレーション「リバーベッド(川床)」。この作品では、美術館の床に大小の石が敷き詰められ、その上を小川が流れる。小川はくねくねと蛇行しながらいくつもの展示室を通り抜けていく。鑑賞者はこの人工のフィールドを歩きながら、まるで自然散策のような体験を味わうことができる。建物の内と外、文化的なもの(アート)と自然といった、一般的には明確に隔てられている区分けそのものを問い直すところにこの作品の面白さがある。

ビデオ作品の「ユア・エンボディード・ガーデン」(2013) via Louisiana Museum of Modern Art

 このほかのセクションには、身体と環境の関係をテーマにした3つのビデオ作品、エリアソンのスタジオをイメージして作られた幾何学的立体模型400個を展示する「モデル・ルーム」があり、彼の作品世界の多様な広がりを垣間見ることができる。展覧会全体を見ると、自然とアート、建築が密接に結びついたルイジアナという美術館の特色を深く読み取り、そこでこそ成り立つ内容として構想されていることがよくわかる。美術館の個性と優れたアーティストによるコラボレーションは、そのために足を運ぶだけの価値を持っている。

ベルリンにあるエリアソンのスタジオをイメージした「モデル・ルーム」(2003)の展示 via Louisiana Museum of Modern Art

「オラファー・エリアソン リバーベッド」
会期 2014年8月20日~2015年1月4日
会場 ルイジアナ近代美術館(フムレベック、デンマーク)
URL http://www.louisiana.dk/

鈴木布美子 (すずき ふみこ)
ジャーナリスト。80年代後半から映画批評、インタビューを数多く手掛ける。近年は主に現代アートや建築の分野で活動している。

 

Column

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2014.10.20(月)
文=鈴木布美子