20世紀を代表する画家、アンリ・マティスの回顧展「ザ・カット・アウツ」がロンドンのテート・モダンで開催中だ。マティスが晩年、カラフルな切り紙絵を数多く手がけたことはよく知られている。この展覧会は世界中の美術館やコレクターのもとに散らばっている120点もの切り紙絵を一堂に集めて展示するものだ。
晩年のマティスは病気による体力の衰えから絵筆による絵画制作を諦め、切り紙絵に精力を注いだ。色彩や線の単純化を通じて新しい表現を切り開いてきた彼にとって、切り紙絵はとても適した表現手法だった。あらかじめ絵の具で着色しておいた紙をハサミで自在にカットすることで、キャンバスの油彩に負けないスケールの作品を生み出すこともできた。
2014.06.25(水)
文=鈴木布美子