ファンタジックとサイケデリック 注目される2人の異なる世界
さて、「絵画」といえば紙や絹、キャンバス、場合によっては板などの支持体上に描かれたものを指すが、大皿に描かれた絵や文様はその中には含まれない。だが「絵画」とは異なる平面の表現にも、とても魅力的な作品がある。その絵付けの領域から紹介されているのが、葉山有樹、見附正康だ。いずれも猛烈に高度な絵付けの技術を有する2人だが、制作の過程も方向性もまったく異なるのが興味深い。
展示風景 撮影:渡邉修
葉山にはまず、自身が創造した古代の神話や伝説、あるいはSF的な終末イメージに彩られた物語があり、そのヴィジョンを磁器の表面を覆う絵として具体化していく。天の四方を司る神獣、五本爪の龍、少女──。コミックやアニメさながらのファンタジックな世界観が、伝統的な染付の意匠と地続きのように見えるのが面白い。
一方、九谷焼の伝統的な赤絵の上絵付けの技法を修めた見附の画面に、具体的な物語はない。元の赤絵が中国経由で日本へ伝わった、ユーラシア各地の文様を消化したものだったのと同様に、見附の手は、さまざまな地域・民族のハイブリッドな文様を、驚異的な精緻さで描き込んでいく。それら文様が皿の上の平面に、順次拡大されながら展開されていくさまには、なにかサイケデリックなCGを見るような幻惑感がある。
展示風景 撮影:渡邉修
右:参考画像《無題 蓋物》 2007年 Private collection
ともにCourtesy of Ota Fine Arts
2012.06.23(土)