アメリカに国宝級美術品があることをどう思う?

 これだけ質の高い美術品が海外にあることを、不満に思う人もいるかもしれない。だがこの日本にも、海外から「流出」した美術品が数多く存在している。たとえば正倉院にはメソポタミアから伝えられた工芸品が、禅宗寺院には中国からもたらされた水墨画が、国立西洋美術館には松方幸次郎が収集した近世ヨーロッパ美術が、収蔵されている。

 それらの「流出」美術品が、日本で生まれ育つ美術をどれほど豊かにし、その作品が生まれた遠い国への憧憬を育んだことだろう。いま、日本ともっとも近しい関係にある国は間違いなくアメリカだが、たとえばアメリカで地味に日本に対する好意をつないでいるのは、こうした美術品なのだ。

法華堂根本曼荼羅図 奈良時代・8世紀 ボストン美術館蔵 Photograph (C) 2012 Museum of Fine Arts, Boston.

 ボストンでもこれだけ1度に日本美術コレクションが公開される機会は滅多にない。まして次の里帰りがいつになるか。この貴重な機会にぜひ、在米親善大使として活躍してきた日本美術たちに会っておきたい。

東京国立博物館 特別展「ボストン美術館 日本美術の至宝」
会期 3月20日(火・祝)~6月10日(日)
休館日 月曜日
開館時間 09:30-17:00(金曜日は20時、土日祝休日は18時まで開館)
※入館は閉館の30分前まで。
料金 一般1500円
問い合わせ 03-5777-8600(ハローダイヤル)
URL www.boston-nippon.jp

【巡回会場/各会期】
名古屋ボストン美術館
2012年6月23日(土)~9月17日(月・祝)
2012年9月29日(土)~12月9日(日)
九州国立博物館
2013年1月1日(火・祝)~3月17日(日)
大阪市立美術館
2013年4月2日(火)~2013年6月16日(日)

橋本麻里
日本美術を主な領域とするライター、エディター。明治学院大学非常勤講師(日本美術史)。近著に幻冬舎新書『日本の国宝100』。共著に『恋する春画』(とんぼの本、新潮社)。

 

Column

橋本麻里の「この美術展を見逃すな!」

古今東西の仏像、茶道具から、油絵、写真、マンガまで。ライターの橋本麻里さんが女子的目線で選んだ必見の美術展を愛情いっぱいで紹介します。 「なるほど、そういうことだったのか!」「面白い!」と行きたくなること請け合いです。

2012.05.26(土)