ハリウッド映画顔負けのスペクタクルシーンもあります

平治物語絵巻 三条殿夜討巻(部分) 鎌倉時代・13世紀後半 ボストン美術館蔵 Photograph (C) 2012 Museum of Fine Arts, Boston.

 もうひとつの《平治物語絵巻》は、やや時代を下った鎌倉時代の合戦絵巻である。貴族に代わり、太刀をふるって戦う武士たちが初めて政権を握った時代。絵巻についても平安時代とは異なり、彼ら武士とその活躍を描いた合戦絵巻が盛んに作られるようになるのは、当然だろう。

 《平治物語絵巻》は清盛に反感を抱く藤原信頼、源義朝らが起こしたクーデターの顛末を題材に、何人もの絵師が参加して制作された、全15巻近い壮大な作品だったようだ。残念ながら現在残っているのは3巻(うち2巻は日本にある)といくつかの切れ端のみだが、戦いへ赴く馬蹄の響き、甲冑の鳴る音、天地を揺るがす鬨の声まで聞こえてきそうな、ハリウッド映画顔負けのスペクタクルシーンを、驚くほど精緻に描きこんでいる。

松島図屏風 尾形光琳筆 江戸時代・18世紀前半 ボストン美術館蔵 Photograph (C) 2012 Museum of Fine Arts, Boston.

 さらに前回ご紹介した尾形光琳が描いた《松島図屏風》や、大規模な保存修復作業によって公開が可能となった、18世紀京都の奇才・曽我蕭白による《雲龍図》、かつて奈良・東大寺法華堂に伝わったことが知られる最古級の仏画の名品《法華堂根本曼荼羅図》など、時代を網羅した名品92点が一堂に公開されている。

雲龍図 曽我蕭白筆 江戸時代・宝暦13年(1763) ボストン美術館蔵 Photograph (C) 2012 Museum of Fine Arts, Boston.

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2012.05.26(土)