大量に吊られた丸鶏は
4時間足らずで売り切れに

 ローカルグルメの宝庫、チャイナタウン。その一角に店を構える「南香(ナムヒョン)」は1938年に創業。チキンライスのルーツといわれる海南島出身の中国人が初代オーナーです。

チャイナタウン店の営業時間は午前11時から午後3時までのみ。1日たった4時間の営業で、これだけ名を馳せているのがすごい。
厨房の様子。茹であがった丸鶏が手際よく解体され、食べやすいようにどんどんカットされていく。中華包丁を巧みに使う職人の技は、見惚れるほどあざやか。

 看板メニューはずばり、「スチームチキン」。ふっくら茹であげた鶏肉に、醤油と胡麻油ベースのあっさりダレをかけて。さらに、卓上に常備してある酸味のきいた唐辛子ダレや、ピリッと刺激のある生姜ダレを交互に鶏肉につけてほおばります。すると、あぁ~マレーシアに来たなぁ~という実感がじんわりこみ上げてくるのです。

「スチームチキン」は、白鶏と菜园鶏の2種を用意。菜园鶏は地鶏の一種で、鶏の旨みが濃い。

 また、特製のタレに漬けこみ、自然乾燥で水分を飛ばした後、油で丸ごと揚げた「ローストチキン」もスチームチキンに負けないぐらい人気。パリッとした食感の鶏皮が滋味深く、かむごとに旨みがしみ出してきます。

 さらに、この店はチキンライス以外の一品料理も充実。マレーシア人がふだん食べている地元の名物料理がそろっているので、ビールと一緒に楽しむのをおすすめします。ただ、夜は営業していないので、その点をくれぐれもお忘れなく。

手前が「ローストチキン」。さすがにひとり旅だと難しいが、複数人でこの店を訪れたなら、チキンは“半羽”で注文しよう。値段は600円程度だし、もも、胸、手羽先など、いろんな部位を食べ比べることができて楽しい。
豚料理にも力を入れている。甘いタレに漬けこんだ「ポークチャーシュー」(写真)やカリカリの皮が香ばしい「ローストポーク」が名物。(写真提供:山崎さん)
オイスターソースで、さっと炒めたもやし。あっさりした味付けで、チキンライスによく合う。
私の大好物! からし菜をいろんな食材と一緒に煮こんだ「酸辣菜/スパイシーベジ」。酸味と辛みの両方の味が口のなかで広がり、高菜漬けのような味。
ひとりでも気軽に立ち寄れる広い店内。チキンライスは「切って盛り付けるだけ」なので、待ち時間がほとんどない。サッと食べてサッと帰るという、立ち食いそば的な使い方も可能。

 この店は、チャイナタウン散策の途中に組みこめるし、クーラーの効いた快適な店内なので、休憩がわりにもぴったり。日本語メニューがあるので、初めてのマレーシア旅の方も安心です。カジュアルな雰囲気のなかで、マレーシア自慢のチキンライスをぜひ!

2017.02.15(水)
文=古川 音
撮影=古川 音、三浦菜穂子