本広克行監督作で映画デビューするも?
――その成果が実り、2005年、本広克行監督の『サマータイムマシン・ブルース』のメインキャストの一人に抜擢されるわけですが、その経緯を教えてください。
自分を売り込むことを決めた1年間はバイトもやめ、プライドを捨て、自分を追い込み、8本の舞台に出演することを決めました。僕は升毅さんが主宰していた劇団MOTHERにいた、ますもとたくやくんと「スペクタクルガーデン」という劇団に、よく客演していたのですが、本広監督は升さんと仲が良いので、たまたま観にいらして。だから、居酒屋での打ち上げでは、がむしゃらに「ムロツヨシ」を連呼して、名刺を渡しましたね。正直こんな感じで監督の映画に使ってくれるわけはないと思っていたけれど、『サマータイムマシン・ブルース』のメインキャストで声をかけてくださって。あれは本当に奇跡でした。
――とはいえ、その後はなぜか、出演作が続かなかったですよね。
僕自身も、ここから人生が変わり始めるものだ、と思ったんですが、あまり変わらなかった(笑)。全然仕事が来ないし、またバイトの日々でしたから、これが現実なんだと思いました。だから、「僕を出してください」と、名刺を持って自分の名前を連呼する生活をふたたび始めました。ただ、今度は『サマータイムマシン・ブルース』で知り合った映画関係者の方もいらっしゃいました。それで端役をもらうわけですが、そのなかの1本が、その後に「LIFE!~人生に捧げるコント~」でご一緒させていただく内村光良さんが監督した『ピーナッツ』だったりしました。
~次回は「勇者ヨシヒコ」シリーズの福田雄一監督との出会い、新作映画『ヒメアノ~ル』などについて語っていただきます。~
ムロツヨシ
1976年1月23日生まれ。神奈川県出身。99年から単独で舞台活動を開始し、2005年『サマータイムマシン・ブルース』で映画初出演。11年から放送のドラマ「勇者ヨシヒコ」シリーズのほか、13年には連続テレビ小説「ごちそうさん」にも出演し、お茶の間に知られるようになる。現在、ドラマ「重版出来!」(TBS系)、バラエティ「LIFE!~人生に捧げるコント~」(NHK)が放送中。映画『HK/変態仮面 アブノーマル・クライシス』が公開中。
『ヒメアノ~ル』
普通の生活に焦燥感を抱くビル清掃会社のパートタイマー岡田(濱田岳)は、同僚の先輩・安藤(ムロツヨシ)からカフェ店員ユカ(佐津川愛美)との恋の橋渡し役を頼まれる。彼女が働くカフェに安藤と足を運んだ岡田は、高校時代の同級生・森田(森田剛)と再会する。
(C)2016「ヒメアノ~ル」製作委員会
2016年5月28日(土)より、TOHOシネマズ 新宿ほか全国にて公開。
http://www.himeanole-movie.com/
くれい響 (くれい ひびき)
1971年東京都出身。映画評論家。幼少時代から映画館に通い、大学在学中にクイズ番組「カルトQ」(B級映画の回)で優勝。その後、バラエティ番組制作を経て、「映画秘宝」(洋泉社)編集部員からフリーに。映画誌・情報誌のほか、劇場プログラムなどにも寄稿。
Column
厳選「いい男」大図鑑
映画や舞台、ドラマ、CMなどで活躍する「いい男」たちに、映画評論家のくれい響さんが直撃インタビュー。デビューのきっかけから、最新作についてのエピソードまで、ぐっと迫ります。
2016.05.27(金)
文=くれい響
撮影=佐藤 亘