芝居を続けるために選んだ道

――ちなみに、その頃のムロツヨシさんはどうアツかったんですか?

 もう25歳ぐらいになっていましたし、めちゃめちゃ焦っていたこともあり、どこか尖っていたんですね。目の前にバイトしかないなか、「どうしたら面白い芝居ができるか?」ということばかり考えていたんですが、周りのメンバーはどこかマイペースだったんです。いくら僕が「(芝居で)食べられるようになりたい」と言っても、「そういう事じゃなくない?」と言い返されるみたいな。こういった温度差もあって、自分から退く道を選んだんです。

――その後も、なかなか結果が出なかったわけですが、俳優をやめようと思ったことはありますか?

 26歳のある日、役者としての才能がないということに気付きました。19歳から芝居をやってきても売れないわけですし、自分の目の前に芝居する場所も、芝居する予定もない。明日、バイトのシフトがあるということだけ。それで「じゃあ、どうする?」と自問自答しても、やっぱり役者をやりたいわけですよ。そこで冷静に考えて、自分でやる限界があるなか、自分が好きなドラマや映画そして舞台に出してもらうには、芝居の経験が必要ということに行きつくんです。それで、演劇人が集まる飲み屋に行って、「僕を出してください。絶対、損はさせません!」と、自分を営業する道を選んだんです。

2016.05.27(金)
文=くれい響
撮影=佐藤 亘