夢のドバイの後は、エジプトでクフ王のたたりに
12月5日。午後3時に降り立ったドバイ空港のパスポートコントロールは、長蛇の列。頭に布を被った男性、黒のローブをまとった女性、欧米人、アジア人……。さまざまな言語が飛び交う列に並ぶこと3時間、入国審査を終えて空港を出たときは、もう夜空に月が輝いていた。この日は、アラビアンナイトを現代に蘇らせたような複合施設、マディナ・ジュメイラのホテルに1泊。
12月6日、ドバイを発ち、アジアとヨーロッパの境界線、トルコのイスタンブールへ。到着した旧市街はあいにくの雨。でも、湿った空に響く祈りの声や、しっとりと濡れた石畳はとても美しくて、旅の疲れを癒してくれる。
屋台のケスタネケバブ(焼き栗)とチャイで冷えた身体を温め、街を撮影。迷路のように入り組んだバザールを歩き、ふたたび通りに出ると、雨上がりの夕空に、ブルーモスクの妖艶な姿が浮かび上がっていた。
12月7日。朝7時のフライトでイスタンブールを出発、ドイツのフランクフルト経由でエジプトのカイロへと向かった。それぞれ3時間と4時間のフライトの間に、トランジットが2時間。熟睡するにも中途半端な時間だが、そこはビジネスクラス。機内ではゆったり寛げるし、なによりハードスケジュールのこの旅では、空港のビジネスラウンジがありがたかった。フランクフルトのラウンジでは、どれだけドイツビールを飲んだだろう。
右:ルフトハンザ航空のランチの前菜。機内でもビジネスラウンジでも、つい飲み過ぎ、食べ過ぎてしまう。
12月8日。そんなリラックスした気分で到着したカイロは、カオスな街だった。とにかく渋滞がひどい。クラクションは鳴りっぱなし、渋滞の原因となっている荷馬車は気にする様子もなく堂々と道路を行く。車窓から見える建物はどれも歴史を感じさせる重厚な造りだが、ペンキが朽ちたままのものも多かった。
翌朝、街の喧騒を抜け出し、三大ピラミッドで知られるギザへ。「ピラミッドは荒涼とした砂漠に立っているもの」という想像を裏切り、カイロ市内から地下鉄やタクシーで簡単にアクセスできる。
入り口でチケットを購入するシステムといい、舗装された敷地内に観光バスが走る光景といい、完全に観光地。すぐ近くには住宅群が迫っているし、隣にはファストフード店もある。ラクダに乗ったおじさんは勧誘がしつこく、王の墓に入るには追加で入場料が必要。勝手に抱いていたイメージとのギャップに、ちょっとがっかり。
「なんだか想像と違うね、たいしたことないね」。そんな罰当たりなことを言っていたその日の晩。私と編集者さんが原因不明の高熱に。もしかしたらクフ王のたたりかも? そんな冗談が言えたのも、移動はビジネスクラスという心の余裕があったからこそ。
2016.03.08(火)
文・撮影=芹澤和美