世界を旅する女性トラベルライターが、これまでデジカメのメモリーの奥に眠らせたままだった小ネタをお蔵出しするのがこのコラム。敏腕の4人が、週替わりで登板します。
第14回は、芹澤和美さんが平穏だった頃のカイロで見たエジプト人の普段着の生活をご報告。
つかみどころのない都会カイロを歩く
大規模デモや暴動など、今年は不安定な情勢がなにかとニュースになったエジプト。今は渡航も容易ではないのだろうが、私が首都カイロを訪れた5年前は、旅行先としてはなんら問題のない場所だった。
到着したのは朝。空港でビザをとり、タクシーで街中へ。朝の出勤渋滞はひどい。車の数は多いし、運転マナーもけっしてよいとは言えず、ひっきりなしにクラクションが聞こえる。そんななか、堂々とやってきたのは、果物を積んだ荷馬車。渋滞を悪化させている当の本人たちは、まったく気にする様子もない。
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馬車の次に現れたのは、銃弾の跡が残る車。「この街、大丈夫か?」とその時は思ったが、運転席では、中年のおじさんが新聞を片手にのんきに運転をしている。今思えば、これも日常の風景だったのかもしれない。初めてみたカイロは、馬車と銃弾の跡が残る車で渋滞し、混沌としていた。しかし、その混沌っぷりがまた、私の旅情を誘ったことも事実である。
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地上はずいぶん混沌としていたが、地下鉄はシンプルで使いやすかった。地下鉄でビジネス街へ出てみると、街は整然として、いたってふつうの近代都市。アラビア語の文字のビル名やポスターの意味は分からないが、スーツ姿のおじさんが忙しそうに行き交い宅配ピザのバイクが車の間をすり抜ける様子は、東京とあまり変わらない。
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取材の合間、都心にあるエジプト考古学博物館を訪ねた。せっかくエジプトに来たのなら、小学生の頃に教科書で見たような、ツタンカーメン王の黄金のマスクや棺も見ておきたい。しかし残念なことに、有名な物はあまり見ることができなかった。その多くが、上野の博物館に貸し出し中だったからだ。がっかりしながら街中を歩いていると、屋上に銃を持つ男を発見。まさか、スナイパー?? たとえ博物館で大物が見られなくても、カイロは飽きることがない。
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2014.01.05(日)
text & photographs:Kazumi Serizawa