世界を旅する女性トラベルライターが、これまでデジカメのメモリーの奥に眠らせたままだった小ネタをお蔵出しするのがこのコラム。敏腕の4人が、週替わりで登板します。

 第22回は、芹澤和美さんがマイナス50度の極寒の地を訪れた時のエピソードをご披露。

防寒服を着込み、「最北端の○○」だらけの街へ

 カナダのイエローナイフは、北極圏から約500kmに位置する北限の街。日本人ツーリストには、オーロラ鑑賞のメッカとして知られている場所だ。私が訪れたのは、最低気温マイナス30度の12月。朝、街が機能し始めても外はまだ真っ暗、午前10時にようやく日が昇り、15時過ぎには日没を迎えてしまうという、冬真っ盛りの時期だった。

こじんまりとしたイエローナイフの空港。荷物用ターンテーブルでは巨大なシロクマの剥製がお出迎え。

 20世紀前半に金の鉱山が見つかりゴールドラッシュに沸いたイエローナイフは、金山の閉山後も、ダイヤモンドの発掘、そして現在はオーロラ観光と、昔から美しく光り輝くものに恵みをもたらされてきた。カナダ北限の街と聞いて、静かで淋しい場所を想像していたのだが、実際に訪れた街はイメージと大違い。ノースウエスト準州の州都であるイエローナイフは、近隣の経済・行政の中心地で、街中には、最北端のマクドナルド、最北端のケンタッキーフライドチキン……など、「最北端の」と枕詞がつくものがたくさんある。また、先住民やアジアからの移民など多民族が暮らし、多彩な魅力に溢れるコスモポリスでもあった。

ダイヤモンド鉱山で働く人が多いため、街の平均年齢はなんと30代前半。雪に包まれた街は活気にあふれている。

 イエローナイフで冬の風物詩といえば、雪景色のほかにもうひとつ、凍った湖の上に現れるアイスロードがある。その総延長は約500km。わずか2カ月の間に、5000台以上ものトラックが湖上にできた道を走り、ダイヤモンド鉱山で働く人々に生活物資を運ぶという。春になり湖の氷が溶ければ、当然ながらこの道は断たれる。空輸での物資輸送はコストが高いため、アイスロードができる真冬の間に、陸輸送で1年分の必要物資を運ぶのだ。

 到着したその日の最高気温はマイナス15度、街の人いわく、「今日は春のように温かな日だ」。真冬にオーロラ鑑賞をするには万全の防寒対策が必要だが、地元の旅行会社を通じて、必要な防寒着や靴をレンタルできる。極端な寒がりの私でさえ、マイナス100度まで耐えられるという防寒服とブーツを着用していれば、外でも寒さを感じることがなかった。

この日の気温はマイナス15度の「小春日和」だが、防寒服は必須だ。

<次のページ> マイナス50度の湖上でうっかり居眠り

2014.02.25(火)
text & photographs:Kazumi Serizawa