世界を旅する女性トラベルライターが、これまでデジカメのメモリーの奥に眠らせたままだった小ネタをお蔵出しするのがこのコラム。敏腕の4人が、交替で登板します。

 第126回は、芹澤和美さんがかつて経験したスーパー弾丸旅行の一部始終をレポートします。

日本を出発、機内でさっそくカメラ紛失のアクシデント

破格の夢のチケット、スターアライアンスの世界一周航空券。フライトのたびに、分厚い束が薄くなっていった。

 「ビジネスクラスに乗って、世界一周をしてきてください」。そんな夢のような取材依頼をいただいたのは2007年のこと。だが、舞い上がったのもつかの間、27日間で23都市を巡ると記された行程表を見た瞬間、これは過去にない弾丸スケジュールになると覚悟した。

 スターアライアンスの世界一周航空券は、加盟航空会社のフライトを自在に組み合わせて旅ができる。同じ都市の降機は1回だけ、経由は同じ都市で3回までなどいくつかのルールはあるものの、エコノミーで30万円台から、ビジネスクラスでも60万円台からと金額は破格。取材陣のスケジュールこそハードだが、本来はゆったりと、世界各地を巡ることができる夢のチケットだ。

旅の後半で訪れたニューカレドニアのイルデパン島。真夏のビーチから真冬の雪原まで、目的地の季節はさまざま。

 12月1日。いつもの旅より大きめのスーツケースの中に、ダウンジャケットや手袋、サングラスにビーチサンダルと、真冬と真夏の服装を詰め込んで、いざ出発。目的地の予想気温は、マイナス30度を下回るカナダのイエローナイフから、36度を超えるドバイまで、70度近い気温差。温度も言葉も習慣も異なる街を訪れる準備を万全に整え、出発の朝を迎えた。

今回の旅では大雪によるフライトキャンセルにも2度あった。こんなことも、世界一周航空券を使った旅の醍醐味。

 まず向かったのは、香港。成田空港のANAビジネスラウンジで、フォトグラファーさん、編集者さんと景気づけにシャンパンで乾杯して、いざ搭乗。

 が、さっそく最初のハプニング。これから各地で写真もたくさん撮らなくちゃ、と思って張りきっていたのに、なんと、機内にカメラを置き忘れてしまったのだ。香港に着いてまずしたことは、家電製品店でのデジカメ購入。最初の渡航先が、多少言葉が分かり、買い物がしやすい香港でよかった!

初日にカメラを紛失、慌てて買ったデジカメで最初に撮影したのはビクトリア湾。

 12月2日。この日は香港からフェリーで約45分のマカオへ日帰り取材。ポルトガル風情漂う街には、大きなクリスマスツリーが飾られ、お祭りムード一色。日本は寒い季節でも、マカオはぽかぽか。過ごしやすい気候で、散策も楽しい。

マカオの中心地に立つ世界遺産の仁慈堂。その前には大きなクリスマスツリーが。

 12月3日。香港からタイのバンコクへ。目的地はバンコクではなく、カンボジアのシェムリアップだ。航空券は香港→バンコク→ドバイの順だが、今回はバンコクから別途チケットを手配して、アンコール遺跡群で知られるシェムリアップに寄り道するというプラン。世界一周航空券をベースにしつつ、ほかのチケットも利用すれば、いろいろな旅が可能になる。

シェムリアップでは、係留気球に乗って上空からアンコール遺跡群を鑑賞。

2016.03.08(火)
文・撮影=芹澤和美