ロストバゲージに遭い、冬服で真夏の南半球へ
12月18日。イエローナイフからカルガリーを経由して、アメリカのロサンゼルスへ。旅も残すところあと3分の1。そしてここから先はどんどん気温が高くなっていく。寒いところが苦手な私には、楽しみばかりだ。
だが、ここでまたハプニング勃発。スーツケースが途中のカルガリーで止まってしまったのだ。ロサンゼルスに届けてもらおうにも、次の都市に届けてもらおうにも、移動続きでどのタイミングでピックアップできるか分からない。結局、荷物は成田に直接送って保管してもらうことに。
ロサンゼルスで1泊の取材を終え、手ぶら(?)でニュージーランドのオークランドへ。日付変更線を越えて12月21日、真夏の南半球に着いた私の服装は、厚手のブーツとフリースという、真冬仕様だった。
12月22日。南太平洋の楽園、ニューカレドニアへ。フランス領の自然豊かなこの国が、この旅のラスト・デスティネーションだ。首都ヌメアではフレンチコロニアルが薫るダウンタウンを歩き、夏服やビーチサンダルなどを購入して、ロストバゲージの補充。翌日、ニューカレドニアで最も美しいと言われるイルデパン島へと渡った。
実はここでもひとハプニングがあった。空港の化粧室で荷物掛けにバッグを掛けたところ、フックごと落下。そのときからパソコンが作動しなくなってしまったのだ。ホテルのロビーに1台だけあったパソコンはフレンチ・キーボードだから使いようがない。もう日本とは気軽にメールのやりとりもできなくなってしまった。もうどうにでもなれ、気楽に行こう……という気分。
イルデパン島には、ヌメアにあるようなビルも、繁華街の喧騒も、バスやタクシーさえもない。代わりにあるのは、手つかずの大自然と、ゴミひとつ落ちていない砂浜、その前に続く穏やかな海だけ。
とくに美しさに感動したのは、腰まで水に浸かりながら30分ほど浅瀬を歩いてたどり着いたビーチ。南洋杉が繁る小道を抜けると、そこには、森に見守られるようにして静かに波打つ海があった。
その昔、メラネシアの人々は、美しい海と砂浜のあるこの島を、「クニエ(海の宝石箱)」と呼んだという。南の島を包み込む静かな時間のなかで、パソコンが壊れたことや荷物をなくしたことなど、どうでもいいような気持ちになっていった。
2016.03.08(火)
文・撮影=芹澤和美