後半戦は食べごたえもある迫力デザート連発

 お次は黒い器に盛られた白い物体に、ザクザクとなにかが刺さっている。白い物体は焦がしバターのクリームで、とてもまったり。チュイルは2種類あり、大きいものは塩味のじゃがいもチュイル、小さいのはキャラメルのチュイル。2種類をそれぞれまったりクリームに合わせてもいいし、両方合わせるのもいいし……。カマンベールの粉末もかかっているから、全体的に塩味がきっちり効き始めている。いよいよフィナーレへの予兆か!

濃厚になってきた4皿目。バターのクリームが軽いのに濃厚。

 ここで登場した3つめのドリンクは抹茶ラテ。これが逸品で、子供の頃から抹茶を飲む機会の多かった私は外で抹茶を飲むとがっかりすることが多いのだが、「ちょっと、ちょっと、高いの使い過ぎでは!?」と口に出したくらいの贅沢抹茶である。お客様の紹介で問屋さんから直接仕入れられることになったそうで、老舗のラベルがついたら手が出せないくらいとみた。

 オリジナル馬上杯に注がれているのもポイントで、ワイングラスのような形でありつつ、素材は抹茶碗的、さらに千利休リスペクトで飲み口は四角いという入魂の器である。歴史好きの店主が馬上杯を語るときのいきいきっぷりも微笑ましい。

ご自慢の馬上杯に入った冷た(すぎな)い抹茶。なんて上質。

 おいしいうちに抹茶を飲み干したところで、チョコレートのひと皿が登場した。中心にあるのがチョコレートのビスキーで、横は香ばしい麦茶のアイスクリーム。さらにいろいろなスタイルのチョコレートが振りまかれ、あたたかなチョコレートソースもかかる。写真撮ってる場合じゃなくなってくるライブ感! 濃厚なチョコレート味だらけのなかで麦茶のアイスクリームが清々しく、食感もいろいろあるので飽きずにすいすい食べられる。

チョコレートのデザート。麦茶のアイスクリームがバランスをとっている。

 そして、フィナーレ! 焼きたてのクレープの登場だ。ムチムチとした素朴なクレープに、なにやらまた液体窒素ものがのせられた。これがおいしい発酵バターだったのだ! もうひと折りして凍ったバターをはさんで食べるという仕組みで、徐々に溶けていくがひんやりしたバターがあたたかいクレープの中にじゅわり。これは素晴らしい仕掛け!

ざっくりと焼いたクレープもフランス的。もちもちしてちょっと甘い。

 レストランの印象は最後のひと皿がいちばん残るからデザートをやりたい、というパティシエがいるけれど、この素朴ながら素晴らしいクレープの印象の強いこと。そして、シンプルで、フランス的で、ナイスアイディアなこの組み合わせは、エスプリ(esprit)を反対から読んでティルプスを名乗る彼ららし~いひと品だなぁ、と最後にしみじみ。

 というわけで、1年限定でまだスタートしたばかりの「キリコナカムラ」。中村樹里子さんの才能が弾けまくっているので、きっと内容は鮮やかに変わっていくだろう。また必ず体験しに行きたい。写真は撮ってもいいですよ、と言ってくださるが、途中正直それどころじゃないかも! と思ったくらいできたて&ライブ感があるので、どんどん食べましょう!

キリコナカムラ
所在地 東京都港区白金台5-4-7(ティルプスと同様)
電話番号 03-5791-3103
※1年限定、予約のみ
[2015年7月来訪]

北條芽以(ほうじょう めい)
神奈川県鎌倉市生まれ。情報誌編集者を経てフリーライター、料理本の編纂を行う。好きなのは炭水化物(特にごはん)とお肉の組み合わせ。お酒はあまり飲めない。「左手にごはん茶碗を!」

Column

北條芽以のLOVEレストラン

美味なるLOVEなひと皿を求めてレストランに通う日々。
著者が偏愛する、この季節、このお店のLOVEはいったい何? あなたの次のレストラン選びに参考になること間違いなし!

2015.07.25(土)
文・撮影=北條芽以