LOVE:フレンチトースト
ひと晩卵液に浸け、ふわふわ&折り目正しい正統派
鎌倉|カフェルセット鎌倉
中学生から大学生にかけて住んでいた鎌倉の長谷という場所。犬の散歩で海まで歩くとき、できるだけ路地を通るのが好きだった。長谷といっても海沿いの坂ノ下というエリアはとても細い路地が多く、自転車さえ通行不能、人間がふたりすれ違うのもやっとというくらい。暗くて狭いところが好きで、犬を連れてそういう道をうろうろと歩いて、古いおうちを「素敵だなぁ」と眺めていた。なので、浜辺よりもそういう道のほうがよほど懐かしさを感じる。
さて、今回、仕事で出かけた鎌倉で寄った「カフェルセット鎌倉」は、そんな場所の、私が幾度となく「素敵だなぁ」と犬と一緒に眺めていた古民家だった。体を横にするように歩いていた路地にある一軒家が、素敵なお店になっていたのだ。大雨の日で、路地はもはや小川に近い状況だったが、その逃げ場のなさも懐かしい。長靴をはいていたので意気揚々と!
「ルセット」は「お取り寄せ」という言葉もまだ新鮮だった1999年に、「パンの価値を高める」というコンセプトの高級パンで大ブレイク。お取り寄せ業界に旋風を巻き起こしたことを、よく覚えているがもう15年も前とは……。どういういきさつか、2013年末、鎌倉にカフェを出すことになったようだ。私もそのパンのおいしさは何度も経験済み。シルキーで香りがほわわわと立ち上るようなパンは、大好きだ。
さて、カフェに戻ると、お店は素敵な古民家。大正時代に建てられた建築物に、ご縁のある家具職人によるすべすべとした流線が美しい家具が配されていてなんとも居心地がいい。なにしろ大雨なので空いていて、屋根に当たる雨音を聞きながら、古民家の空気を独占できてしまった。もう、ノスタルジー以外のなにものでもない感じである。
しかし、ゴロゴロしてはいられない! 目の前にはクリアしなければならない問題が……。またもやメニューで悩んでしまったのだ。候補1は食パンの食べ比べ。銀座「セントル ザ・ベーカリー」でも楽しんだが、ルセットのパンで……しかもおかわり自由……。候補2は名物のフレンチトースト。結局、取材で試食の多かったこの日は、食パンを多量に食べるべき胃ではないと判断し、「高級パンと平飼い卵を使ったフレンチトースト」に決定! 同行者は「高級パンと絶品ベーコンで作るBLTサンド」。どちらも高級パンを謳うが、すべてのパンが高級だ。
先に登場したのはBLTサンドである。高級パンに対抗できるほどの存在感を示すベーコンがお分かりだろうか? このクルンと巻きつつ弾力がある状態は、そんじょそこらのベーコンでは出せない力。地元の専門店「アルトシュタット」のものだそうで、参った参った。レタスもシャッキシャキ。トマトはとても甘く、BとLとTの組み合わせの妙を改めて知るくらいバランスがいい。
2014.10.22(水)
文・撮影=北條芽以