常に人間を描きたいという気持ち

――今年に入って、ついに長編オリジナルの脚本を2本書いたとのことですが、それによって見えてきたものはありますか?

 これが僕の作品です、というものを生み出すには自分で書いた脚本を監督するか、小説を書くしかないと思いましたから。とにかく自分が面白いと思うことを、やりたいことをやり尽くそうと思って書きました。2本とも元々何年も温めていたネタだったんですが、1本(脚本家が主人公の劇団モノ)は、『ばしゃ馬さんとビッグマウス』でできなかったことを、もう1本(復讐モノのサスペンスコメディ)は『FORMA フォルマ』でできなかったことを入れ込みました。もちろん、吉田監督的な部分も、坂本監督的な部分も自分の中にあると思うのですが、今回の2本はそれとは別に、吉田監督的でも坂本監督的でもない、どこにも出せない部分をカタチにしたかった感じです。

――その作品に関しては、どのようなカタチで発表されていくのでしょうか?

 一応、依頼されて書いたのですが、映画化は実現しないことの方が多いので、あまり期待せず、とりあえず小説にしようと思っています。僕が作品づくりで、これまでも、これからも一貫して変わらないのが、常に人間を描きたいという気持ちです。僕から見える人間だったり世界だったりを、観る人にどこかで共有してもらえたらうれしいですね。また今後も、吉田監督や坂本監督の作品に関わるときがあれば、これまで同様、二人のやりたいことに合わせて、脚本を書いていきたいと思っています。

仁志原了(にしはらりょう)
1971年生まれ。京都府出身。小劇場の舞台役者を経て、04年にNCWに入学し、『蹉跌』『告白』などの自主映画を製作。その後、07年に『机のなかみ』を機に、『ばしゃ馬さんとビッグマウス』『麦子さんと』と、吉田恵輔監督作の共同脚本を務めたことで、注目を浴びる。

『FORMA フォルマ』
ある日、同級生の由香里(松岡恵望子)と再会し、自分が働く会社に彼女を誘った綾子(梅野渚)。だが、婚約者(仁志原了)がいる由香里に対する綾子の振る舞いは、次第に冷淡になっていく。さらに、綾子が抱える心の闇は一層深くなり、悲劇を生むことに。
(c)kukuru inc.
8月16日(土)からユーロスペースほか全国順次公開
http://forma-movie.com/

くれい響 (くれい ひびき)
1971年東京都出身。映画評論家。幼少時代から映画館に通い、大学在学中にクイズ番組「カルトQ」(B級映画の回)で優勝。その後、バラエティ番組制作を経て、「映画秘宝」(洋泉社)編集部員からフリーに。映画誌・情報誌のほか、劇場プログラムなどにも寄稿。

Column

厳選「いい男」大図鑑

 映画や舞台、ドラマ、CMなどで活躍する「いい男」たちに、映画評論家のくれい響さんが直撃インタビュー。デビューのきっかけから、最新作についてのエピソードまで、ぐっと迫ります。

2014.08.08(金)
文=くれい響
撮影=鈴木七絵