好評発売中の「CREA」2025年夏号では、母娘問題、職場の人間関係から、性やお金の悩みまで、OVER THE SUN(ジェーン・スーさん、堀井美香さん)のおふたりをはじめ、叶姉妹のおふたり、みうらじゅんさん、上沼恵美子さんなど様々な「人生相談の名手」に読者の悩み相談に乗っていただきました。
今回の回答者は僧侶の南直哉さんです。
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【相談】死にゆく夫に優しくできなかった

【お悩み】
23年連れ添った夫と、3年半前に死別しました。脳梗塞で倒れ、最後の1年は入退院を繰り返しました。知的で優しかった夫が怒りっぽくなり、辻褄の合わない発言や暴言も多くなり、ふたりきりでいることがつらくて、私も優しく接することができませんでした。そのことが、悔やんでも悔やみきれません。最期は、私を恨んで死んだのではないか、どうして寄り添えなかったのか、誰にも言えず心が重いままです。
(58歳・女性)
人を亡くせば、大なり小なり悔いは残るものです。こうすればよかった、こうしなければよかった。そんなふうに後悔を抱くことは自然なことですし、亡くした人に対する感情というものは、後悔であれ恨みであれ、無理に消さない方がいい。この方の場合は罪悪感もあって、こんなことは他人には言えないと、ずっと胸の中に秘めていらしたと思うのですが、そもそも後悔を抱えるということは旦那様のことを愛していた証拠。その後悔をむしろ大切にしていただきたい。
ただ、死者への感情は伏流する。最初は表でざわざわしているんですが、だんだん沈んで、それでも奥の方で消えずに流れていて、なにかの拍子にザバッと表に出てくるんです。かき乱されないためには感情を流す水路を作るといい。具体的には旦那様への思いを誰かに話すといいですね。距離の近すぎない信頼できる方に思うままを話せば、心が幾分かは柔らぐでしょう。
2025.08.12(火)
文=井口啓子
写真=平松市聖
CREA 2025年夏号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。