野生のヒョウ、ゾウ…ヤーラ国立公園で希少な動物に出会う

 さて続いて訪れたのが、南東部にあるヤーラ国立公園。面積は約979平方キロメートルと超広大(東京ドーム2万個分)で、スリランカで2番目に大きな国立公園だという。

 スリランカヒョウやアジアゾウなど多様な動物が生息していて、アニマル・ウォッチングの人気スポットになっている。国立公園近くの街ティッサマハーラーマから出発する“ジープ・サファリ”の半日ツアーに参加してみた。

 早朝4時半、宿に迎えにきた四駆車に乗り込んだ。価格を抑えられる相乗りツアーにしたので、途中でオランダ人のバックパッカー女子ふたりもピックアップすると、夜道を怖いくらいの猛スピードで走っていく。

 ガイドはドライバーと助手席の男ふたり。ともに若い青年だった。料金を支払う公園事務所が近づくと、ツアーの四駆車で渋滞。午前6時の開門と同時に、車が次々に園内へ。

 入園とともに、さっそく水辺には、ワニやスイギュウがたくさん。カラフルなクジャクやペリカン、名前がわからない鳥もいろいろと飛んでいる。ブラック・フェイス・モンキーもいた! ドライバーは出没スポットを熟知していて、次々にぼくらに動物を見せてくれた。だが、彼の運転はときにアグレッシブすぎて、でこぼこの道では尋常ないほど揺れる。

 そうしてしばらく園内をぐるぐるまわっていると、オランダ女子のひとりがはっと息をのみ、「ビューティフル」とささやいた。スリランカヒョウがぼくらの車の前を横切ったのだ。一瞬時間が止まるような美しさを放っていた。

 ヒョウは必ず出会えるわけではないレアな存在で、ツアー参加者のお目当てのひとつになっている。まわりにはすぐにほかの車が続々と集まってきた。出没情報がドライバーたちの間で共有されたのだろう。みなエンジンを止めて静けさをつくったが、鳥のさえずりがこだまするだけで、ヒョウはもうあらわれなかった。

 広い湿地の向こうにゾウも発見。鼻で器用に草をむしって口に運んでいて、かわいい。もっと近くで見たいところだが、園内は決められた場所以外で車から降りることが厳しく禁止されている。サファリは、ズームレンズと双眼鏡が必須だと学んだ。

 途中、土産店やトイレなどがある建物で朝食休憩。ツアー中はここで唯一車から降りられ、ガイドが用意したダルカレーやくだものをいただいた。それからまた車を走らせ午前11時頃まで、アニマル・ウォッチングを楽しんだ。

 補足情報だが、ホートン・プレインズにはキャンプサイトがあり、ヤーラにはバンガローが点在していて事前予約すれば泊まれるらしい。

 現地で話したスリランカ人の女性は、家族でヤーラのバンガローに宿泊したことがあるといい、「夜は星空が本当にきれい。朝、鳥のさえずりで目を覚ましたら、動物たちがすぐ近くまで遊びに来るの。最高よ」と、激推ししていた。

 大自然の夜はいったいどんな世界なのだろう。今回はともに日帰りだったが、いつかひと夜を過ごして星空を眺めてみたい。

*記事の情報は2024年9月時点のものです。

一ノ瀬 伸(いちのせ・しん)

ライター。1992年、山梨県市川三郷町生まれ。立教大学社会学部卒業後、山梨日日新聞記者、雑誌「山と溪谷」編集者などを経て2020年からフリーランス。時事やインタビューのほか、旅や自然、暮らし、精神などに関する記事を執筆している。

2025.08.07(木)
文・写真=一ノ瀬 伸