●憧れの青木崇高にも助けられた主演ドラマ

――二宮和也さん演じる父の帰国を待つ長男を演じた、22年公開の『ラーゲリより愛を込めて』の現場も大きな経験になったかと思います。

 オーディションを受けたときは、まったく手応えがなかったのですが、まさかの合格で、瀬々敬久監督の演出を受けるという、とても貴重な経験をさせていただきました。

 シベリアにいるお父さんを待ち続ける4人兄妹の長男で、お母さんも支えている設定だったのですが、当時の自分はお芝居に芯がないというか、今観返すと恥ずかしい、どこかふがいないお芝居をしてしまったなと反省しています。

――そして、今回主演を務められたドラマ、Huluオリジナル「十角館の殺人」。綾辻行人さんによる人気小説の江南(かわみなみ)孝明を演じるプレッシャーは?

 僕が肩に力が入っていたこともあり、内片輝監督からは「とにかく、楽しんでください」と、よく声をかけられました。さらに、共演の青木崇高さんにも助けられました。青木さんは『るろうに剣心』で左之助役を演じられていた方なので、僕の中では、どこか特別な存在だったんです。だから、最初にお会いしたときの興奮も忘れられません。

――しかも、ミステリ研究会の元メンバーだけに、膨大なセリフ量や早口キャラというところに苦労されたのでは?

 それに関しては、とにかく練習しかありませんでした。事前に青木さんと読み合わせをさせていただき、待ち時間などを大切にしました。とはいえ、練習してきたものを、本番でそのままやるのではなく、その場で青木さんが投げてきたパスをその場で返すというところを大事にしました。監督からも、何度も「とにかくフレッシュに!」っていう言葉をかけていただいたのですが、そこも大事に演じさせてもらいました。

2024.04.05(金)
文=くれい響
撮影=佐藤 亘