●掘れば掘るほど、深い新作映画でのキャラクター
――自身にとって、転機となった作品は?
「デスノート THE MUSICAL」です。この作品が初めてのミュージカルで、かつ初主演を務めさせていただきましたが、周りのスタッフ、キャストの方々に助けられながら、なんとか完遂できました。
こんなに時間をかけて、役柄を自分の体内に染み込ませたことはなかったぐらい全身全霊で挑むことができました。この貴重な経験が、映像やほかの仕事をしているときにも影響していると思っています。
――最新出演作『君が世界のはじまり』で演じた校内の人気者・岡田についての役作りは?
台本を読んだとき、岡田はこの映画のなかで、いちばん普通で、いちばん異常に見えたんです。
大人っぽい高校生が多いなか、いちばん普通に見えるし、悩むことが当たり前な世界のなかでは、悩みがないことが異常に見える。それをどう解釈してもらっても構わないのですが、同性からも異性からも人気があり、いわゆるスクールカーストの上にいるような人なのに、分け隔てなく、誰とでも話せる。
そういう育ちの良さ、イヤミのなさみたいなものを出すのは難しかったですね。掘れば掘るほど、自分に持っていないものが出てくるんです。
――印象的な撮影エピソードを教えてください。
関西出身が多いキャストのなかで、関西弁で芝居をするのが大変でした。一度セリフを吹き込んでもらったものを聴き込んでから、芝居について考える感じでした。
記憶に残っているのは、ショッピングモールでのバンド演奏ですね。最初に台本を読んだときは、「岡田はこんなに取り乱すのかな?」と思っていたんですが、あるとき、伊尾役の金子(大地)くんに「岡田の悩みって、何だろう?」と言われて、ハッと気づかされたんです。
そんな岡田の本性というか、ネガティブな面が、あのシーンで見え隠れしていると思います。
2020.08.14(金)
文=くれい響
撮影=平松市聖