自主映画の常識を超えた
卒業制作

――そして、卒業制作作品として発表した『SLUM-POLIS』が自主映画界で話題になり、後に劇場で一般公開されます。上映時間113分のSFアクション大作という、自主映画の常識を超えた一本を撮るに至った経緯は?

 それまでにいくつか賞はもらっていても、昔からそこまで自己評価は高くないですし、プロの映画監督になれる保証なんてないですから。そこで「プロより面白いもの、誰もやったことのない映画を作るしかない!」と思ったんです。ここで精一杯頑張って、無理だったらしょうがないじゃんって。もう、最後のあがきに近かったです(笑)。『SLUM-POLIS』は、200万円の製作費と40日間のスケジュールで撮りました。

――日本映画界の現状に対する想いみたいなものもあったのでしょうか?

 自分が面白いと思っている映画と、日本で作られている映画があまりにかけ離れていて、「僕が間違えているのか?」「単純に、日本映画が面白くないのか?」ということも、正直分からなくなっていました。だから、たとえ世間の温度感とは違っても、自分が面白いと思っているものを作ろうと思ったのも大きいです。『SLUM-POLIS』があったことで、今の仕事に繋がっているとは思いますが、未だに自分の中で処理しきれていないことがたくさんある作品です。

――そして、自主映画時代の一本『眠れる美女の限界』をセルフリメイクした、『THE LIMIT OF SLEEPING BEAUTY』で商業映画デビューを果たします。

 いろんな企画が頓挫していくなか、リメイクのオファーが来たのは有難かったですね。『眠れる美女の限界』は自分が作っていて楽しい作品でしたし、それをもう一度作らせてもらえるなんて、純粋に嬉しかったです。それに、自分のオリジナル脚本で商業映画デビュー作を撮れるというのも、とても良いチャンスでした。

2019.01.11(金)
文=くれい響
撮影=佐藤 亘