大阪市には日本最大級のコリアンタウンがあります。生野区桃谷の「大阪コリアタウン」から、JR大阪環状線・鶴橋駅周辺の「鶴橋コリアタウン」こと「鶴橋商店街」にかけての一帯には、キムチやチヂミなどの韓国の食品を扱う店、民族衣装店、韓国料理や焼肉の店、最新トレンドのメニューを揃えたカフェや人気のコスメ、韓流グッズを販売する店などが120軒以上も。

 でも、今回ご紹介するのは、コリアンタウンから離れた大阪市阿倍野区の韓国カフェ「カフェ イヤギ」。最寄り駅は、大阪メトロ・阿倍野駅、阪堺電気軌道上町線・松虫駅です。下町風の住宅街にある小さなお店には、他にはない韓国のお餅がいろいろあって、わざわざ行く価値があります。

 私は、ソウルを旅した時、韓国の伝統の餅屋さんを見つけてファンになったのですが、日本ではなかなか見つからず、残念に思っていたのです。

 「カフェ イヤギ」は、2024年7月オープン。ソウル出身のイ ヒョシュクさんが営むカフェです。お店に入って右手のコーナーに、その日の作りたてのお餅が何種類も並んでいます。

 まずは、取材当日に並んでいたお餅をご紹介しましょう。

 「ソンピョン」は、韓国の旧盆であるチュソク(秋夕)に欠かせない伝統的なお餅。米粉をこねた生地ですりゴマ、マメなどの餡を包んで形作り、松の葉を使って蒸すのですが、ヒョシュクさんは松葉で蒸す代わりに松の実を使い、愛らしい花や葉っぱの形にアレンジ。もち米のお餅とは異なる歯ざわりで、ゴマや黒蜜の風味が広がる上品な味わいです。

 チャルトックは、韓国ではポピュラーなもち米で作ったお餅。当日は2種類あり、イチジクを使った「イチジク チャルトック」と、栗とクランベリーを入れた「栗 くれんべり チャルトック」。もっちり生地に、食感のアクセントとしてアーモンドを加えてあります。それぞれ、イチジクのコク深い風味、クランベリーのさわやかさがあり、異なるおいしさ。

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