2014年4月公開のこのコラムでご紹介した「一吉(ひとよし)」は、2008年創業の珍しい最中の専門店。谷町筋に面したビルから移転したと知り、改めて訪ねました。

 100年以上経つ木造2階建ての建物を1年半かけてリフォームし、今年2月にようやくリニューアルオープンしたのだそう。場所は、町家を改装した飲食店やカフェ、雑貨店などが多い空堀商店街からも近い瓦屋町。白い暖簾が揺れる和菓子屋らしい店構えです。

 「100年ほど前の建物で、前は印刷屋さんだったそうです。大工さんと一緒に自分たちも作業しました。2月に再開した時は日曜だけの営業。少しずつ営業日を増やして、今は木曜から日曜日の週4日営業。喫茶スペースはありませんが、アイス最中やつぶあんバーは、座って食べていただけます」と、店主・山本由紀子さん。

 山本さんは、雑貨メーカーに勤めていた時、クッキー部門の担当になり、お菓子を作り始めたのですが、小さいころから好きだった和菓子を手作りしたいと、町の小さな店で修業。「作られることが少なくなった白味噌餡を出したい」「できたてのパリパリの食感を知ってほしい」と最中の専門店をオープンしたのでした。

 餡に使っているのは、小豆と砂糖と寒天、有機の白味噌。全て国産で、寒天は大阪府高槻産など、こだわりの材料。白味噌餡は、銅鍋で1回に1.5キロ、毎日、少量ずつていねいに炊いています。

 その白味噌餡と合わせた定番の最中は、ほうじ茶でシロップ煮にした「いちぢく」、キャラメリゼした「ごぼう」、沖縄・波照間島の黒砂糖をからめた有機くるみをトッピングした「ごまくるみ」。それぞれがアクセントになって、他にはないここだけの最中になっています。

 もちろん、粒餡やこし餡も、全て自家製。保存料、添加物は一切使っていません。あっさりした甘さで、いろいろな風味があるから、次々食べたくなるのです。

2025.09.14(日)
文・撮影=そおだよおこ