ビールのおいしさと誠実な人柄に感動

週末に開かれる青空市場。露店には、そそられる食材がずらり。

 異国で必ず訪ねてみるのが、市場。週末にウラジオストクを旅した私は、運よく中央広場の青空マーケット(4~11月開催)をのぞくことができた。お昼過ぎに出かけると、すでに大賑わい。

魚卵と魚の専門店。搬送に使っていたのは、日本のお古のトラック。

 さすが港町だけあって、市場も魚介類が充実。切り身の魚だけでなく、イクラやキャビアも日本よりはるかに安く、しかもものすごい大ボリュームで売られている。生鮮食品を市場で買うのはなかなか難しいけれど、眺めているだけでも面白い。

マーケットには蜂蜜専門店が並ぶコーナーも。

 蜂蜜専門店もたくさん。冬が長く厳しいロシアでは、風邪予防のために蜂蜜を料理に多用するのだそう。農家直売だからとても安く、コムハニーが両手いっぱいの量で400円ほど。蜂蜜好きにはたまらない!

左:スーパーのビールコーナーに並ぶのは、ロシアや近隣各国のビール。
右:ドラフトビールの自動量り売り機にも心が釘付けに。

 滞在中、よく飲んだのは地元のビール。ロシアのお酒というとウォッカのイメージが強いけれど、ビールの人気も根強い。ホテルの近くにあるスーパーには、ドラフトビールの自動量り売り機まであった。

 ちなみに、ロシアでは2011年に法律が改正されるまで、ビールはアルコールではなく清涼飲料水として扱われていたのだそう。

土産物店を手伝う猫、路地裏でKGBのごとく目を光らせる猫。猫がいたるところにいるウラジオストクは、きっと街の人が優しいのだと思う。

 日本から近く、治安がよく、システマチックで旅しやすく、街も建物も美しいウラジオストク。ビールもロシア料理もとても美味しい。

 でも、なにより印象に残ったのは、ローカルの人柄。ウラジオストクを発つ日の早朝、予約したタクシーが来ていると親切に部屋まで伝えにきてくれたのは、無愛想に見えていた、アパートメントホテルのセキュリティーのおじさんだった。

 人々は、すすんで世話を焼いてくれるでもなく、笑顔で対応してくれるわけでもないけれど、頼みごとをすると真摯に応えてくれる。無駄に愛嬌をふりまかないところも、私にはむしろ誠実に感じられた。またこの街を旅したいと思う。次回は、港町の空が晴れ渡る夏に。

芹澤和美 (せりざわ かずみ)
アジアやオセアニア、中米を中心に、ネイティブの暮らしやカルチャー、ホテルなどを取材。ここ数年は、マカオからのレポートをラジオやテレビなどで発信中。漫画家の花津ハナヨ氏によるトラベルコミック『噂のマカオで女磨き!』(文藝春秋)では、花津氏とマカオを歩き、女性視点のマカオをコーディネイト。著書に『マカオ ノスタルジック紀行』(双葉社)。
オフィシャルサイト http://www.journalhouse.co.jp/

Column

トラベルライターの旅のデジカメ虫干しノート

大都会から秘境まで、世界中を旅してきた女性トラベルライターたちが、デジカメのメモリーの奥に眠らせたまま未公開だった小ネタをお蔵出し。地球は驚きと笑いに満ちている!

2018.01.16(火)
文・撮影=芹澤和美