今月のテーマ「黒幕」
【MAN】
モリアーティの残虐性が
ホームズを得て暗く輝く
シャーロック・ホームズのライバルとして知られる、モリアーティ。黒幕の代名詞として語られることもある男を、日本の新鋭漫画家達が主人公に据えた。
21歳で大学教授となった彼は、裏で「犯罪相談役(クライムコンサルタント)」を営んでいた。仲間達と手を組み、法律では罰せない悪徳貴族達を抹殺。だが、ダークヒーローの恐怖を世に知らしめるためには、悪事を暴くヒーローが必要だ。モリアーティは、その存在すらもプロデュースする。それが――名探偵シャーロック・ホームズ。
第1長篇『緋色の研究』を本歌取りした「シャーロック・ホームズの研究」(第7、8、9話)など、原作の人物設定やトリックを活用しながら大胆にアレンジする手腕が見事。モリアーティの視点を採ることで、世直しのために犯罪に手を染めるダークヒーローへの共感度も上がる。やがて訪れるホームズとの直接対決でどちらを応援することになるか? 今から楽しみだ。
『憂国のモリアーティ』(既刊3巻)
構成 竹内良輔/漫画 三好 輝
英国の階級制度を転覆させ世直しするためには、社会に恐慌をもたらす必要がある。「僕達が演出し飾り立て意味を持たせた“死”こそが 真に人々の……この国の目を覚まさせる事になる」。犯罪者モリアーティが、ホームズという光を得て暗く輝く。『ジャンプSQ.』連載中。
集英社 438円
2017.09.05(火)
文=吉田大助