白い紙に1本のペンで、紺碧の海も詩情豊かな雪原をも描きだすのがマンガ。方言混じりの温かなセリフや情感たっぷりの風景で紡がれた、実在の街を舞台とするマンガは、ページを開くだけでその街にトリップさせてくれる。ということで、街が印象的に描かれるマンガを12作品ピックアップ。
第4回は“地方出身のマンガ家から見た都会”をテーマに、3作品をご紹介します。
人気マンガ家となった作者が、“あの頃”の想いを綴った自伝的マンガには、フィルターのかかった理想の都会の上に現実が塗り重ねられている。故郷で花開いた純粋な夢と憧れ、都会に出てからの挫折と苦悩の日々――。それでも前に進み続ける作者の姿が眩しい3作。読めば、力がもらえます。
» 第1回 切なく深い感情が交差する「海辺の街」
» 第2回 北のロマンが息づく街「札幌」
» 第3回 ディスカバー・ウエスト「三都物語」
叙情派自伝の第1作 『上京ものがたり』
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東京で感じた痛みをバネに前へ進む
高知から上京し、美大に入った「私」は、働かない彼氏と同棲し、生活のために歌舞伎町のミニスカパブでバイトを始める。「あたしはここじゃないどっかに行くんだ」。やがて小さな絵の仕事が入り――。
『上京ものがたり』
西原理恵子 小学館
全1巻 781円
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2015.08.15(土)
text=Mao Yamawaki
CREA 2015年9月号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。