今月のテーマ「先生と私」
【MAN】
師匠の強さを誰よりも知る弟子の不安が物語のキモ
少年マンガは繰り返し、師匠と弟子の関係を描き続けてきた。弟子(少年)にとって師匠とは大人の象徴であり、憧れであり、いつか倒すべき最終目標でもある。インターネット発の大ヒットマンガ『ワンパンマン』は、少年マンガのさまざまなお約束を、なぞりながらもことごとく踏み外す。師弟関係についても、同様だ。
ツルツルのハゲ頭で、赤い手袋とマントのついた黄色いスーツ。見た目は「○ンパンマン」ながら、あらゆる敵をワンパンチで倒す最強ヒーロー、その名は「サイタマ」。彼に弟子入り志願したのが、サイボーグのジェノスだ。修行の手合わせもするにはするが……この師弟関係は、弟子がひたすら師匠に尽くす。強すぎるが故に人々に誤解されてしまう師匠を、弟子は心配し守ろうとする。
あまりにも強すぎるヒーローは、もはや人類の敵なのか? その強さを誰よりも知る、弟子の視点を取り入れたことが、このマンガの強み。
『ワンパンマン』 ONE+村田雄介
マンガ素人のONEが、ホームページに連載していた殴り描き状態の「ワンパンマン」。それを読み感銘を受けた『ジャンプ』マンガ家の村田雄介が、直に連絡を取りリメイク実現にこぎつけた。そんなレジェンドストーリーさえも味方に付けて、最強タッグは高みを目指す。
集英社(既刊5巻) 各400円
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2014.05.05(月)
文=吉田大助