【複数巻BLは大人気作品の証である。】

 作家さんに聞いた話によると、BLマンガほど読み切り作品を求められるジャンルはないそうです。理由のひとつはBLマンガ雑誌には特集主義が多いこと。その場合「サラリーマン」「メガネ男子」「制服」などと毎号異なるお題縛りになるので必然的に一話完結。そしてそれらが作家ごとに単行本化され、「短篇集」としてまとまります。1冊でいろんな話が楽しめるため、作家買いをする読者にも短篇集は人気。雑誌の連載作でさえ単行本1冊分に満たない長さの作品が大多数。ですから逆説的ですが、わざわざその需要に逆らって2巻、3巻と巻数を重ねる作品は、読者の支持が相当熱いと見て間違いない。

メガネ男子×どさんこ男子の
のんびり同居ラブストーリー

 複数巻もののBLで今最高にノっている作品といえば、雲田はるこさんの『いとしの猫っ毛』です。高校生のときに離ればなれになり、6年間遠距離恋愛だったみいくんと恵ちゃん。物語は北海道を一歩も出たことがない天然どさんこボーイの恵ちゃんが就職を機に意を決して、みいくんの住む東京へ上京してきたところからはじまります。ポルノ小説家を生業とし、イケメンでモテるみいくんは、おばあちゃんの持ち物件「またたび荘」の管理人でもあります。もともとノンケだった恵ちゃんとの仲はキス止まり。同居で進展があるかと思いきや、個性派の下宿人たちに加え、ドS編集者の火野さんにペースを乱されて、さあ二人の恋はどうなるの? 「ひとつ屋根の下もの」かつ「幼なじみもの」かつ「初恋もの」かつ「遠恋もの」かつ「上京もの」。ラブコメの鉄板ロイヤルストレートフラッシュ設定もBLになると新鮮。ひとことでいうと超甘酸っぱい。

『いとしの猫っ毛』 雲田はるこ

寂しがり屋のみいくん×おっとり屋の恵ちゃんの恋。1 、2巻、小罇篇をへて4月23日に新刊3巻とファンブック『まるごとねこっけ』が同時発売。70年代乙女ちっくマンガの遺伝子を感じる画風が最高にかわゆい。ほんわかホロリな物語。
リブレ出版(既刊3巻) 各638円
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Column

BLマンガ基礎講座

BLはボーイズラブの略。ざっくり定義を述べると「主に女性の読者に向けて描かれた男同士の恋愛をテーマにした作品」。実は名作が満載のこのジャンル、食わず嫌いはもったいない!

2014.04.02(水)
文=福田里香

CREA 2014年4月号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

私はこの顔で生きていく

CREA 2014年4月号

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私はこの顔で生きていく

本体743円
特別定価780円(~3/31税5%)/価格802円(4/1~税8%)