今月のテーマ「友の言葉」
【MAN】
勉強も部活もバイトもしない
起伏ゼロの青春を全肯定
性格も頭の出来も家庭環境も違うのに、不思議とウマが合う男子高校生の瀬戸小吉と内海想。〈この川で暇をつぶすだけの青春があってもええんちゃうんか〉という信念のもと、放課後の川べりで、他愛もないことをゆるゆると語り合う。関西ノリのボケとツッコミの応酬が、面白おかしく展開。
現実が落とす影も霞むほど、ギャグ満載でのほほんとした瀬戸と内海の会話に比べ、樫村さんとハツ美が交わすJKトークはリアルでシビア。それどころか、ハツ美の発言の鋭さには、耳を傾ける価値ありだ。内海に片思い中の樫村さんへの、キツいけれど恋愛成就に役立ちそうなアドバイスも、被害妄想を募らせる田中真二への、味方に引き入れるための殺し文句も見事だ。
一見、敵か味方かわからないハツ美のような存在の率直なひと言が、意外に未来を変えるかもしれず、そうした言葉をくれる相手を、本当は友と呼ぶべきなのかもしれない。
『セトウツミ』(既刊7巻) 此元和津也
瀬戸と内海の8割方がギャグという秀逸なトークに耳を傾ければ、ちょっとしたストレスなど雲散霧消。最新刊では、「大地と天空」の章は必読だ。瀬戸が内海にギターを習う場面では、ニヤニヤ笑いが止まらない。存在感の強いキャラが増えてきて、先の展開にますます期待。
秋田書店 429円
2017.05.29(月)
文=三浦天紗子