40代は体の不調を語り合いながら
きのこを選ぶのがセオリーか
いよいよ、きのこの盛り合わせが登場した。昨今の、部位別の名称を背負って守られる焼き肉と同じスタイルで、きのこには名前と効能が書かれている。きのこの姿はさまざまで、菌類の進化のものすごさを目の当たりにする。なんでこんなにいろんなふうになったかなぁ。
このきのこたちは黒いスープでしゃぶしゃぶにして食べる。きのこだからすぐ火が通り、それぞれに香りも味も違うのだ。火を通すとその個性が顕著になるみたい。
そして、「疲れてるから“体力UP”だな」「美容には衣笠茸よ!」などと、きのこの札を見ながら40代の健康トークに花が咲くのはお約束。私はなんといっても「記憶力UP」のヤマブシタケをお願いします! きのこに個性があるうえに、たれも薬味も豊富なので、まったく飽きることなく食べられる。
ここまで、きのこ押せ押せムードで、「もう肉よりきのこラブかも♪」なんて思っていた一行であったが、最後に薄~くスライスした鶏肉が出てきた。これがとんでもなくおいしい!
「静岡県産 美桜鶏」と書かれていたが、そのまったりと舌にまとわりつくようななめらかさ、鶏肉らしい胸肉の味わい、しかし歯応えはきちんとあって、その繊維の隙間から出てくる肉汁のおいしさたるや……! 「こ、こ、これは唐揚げとかにしたらどうなっちゃうの!?」「刺し身で食べてみたい……」と騒然とする美味である。しゃぶしゃぶするスープがきのこたちによっておいしく育っていたこともあるのだろうか。
興奮の鶏肉を平らげ、スープには動物性の旨みも加わって、いよいよ黒いスープがおいしくできあがっている。〆はきのこを練り込んであるという麺。きのこパワーなのかツルンと弾力があり、細麺がスープを絡めとるよう。ああ、鍋料理としてなんと完成していることか。
デザートの杏仁豆腐を食べて、寒くなりはじめた六本木の街に出るが、なんだか体はポカポカ。記憶力がUP! しているかどうかはともかく、体は元気になった。これからも疲れてしまったら出かけたい、きのこパワーをチャージできるシャングリラである。
関係ないけど、本名以外でなにか書くことがあったら、苗字は「宝茸」にしようと思うので誰か覚えておいてほしい(記憶力UPはしていないようです)。
シャングリラズ シークレット
所在地 東京都港区六本木4-11-11 六本木GMビル4F
電話番号 03-6804-5095
[2015年10月来訪]
北條芽以(ほうじょう めい)
神奈川県鎌倉市生まれ。情報誌編集者を経てフリーライター、料理本の編纂を行う。好きなのは炭水化物(特にごはん)とお肉の組み合わせ。お酒はあまり飲めない。「左手にごはん茶碗を!」
Column
北條芽以のLOVEレストラン
美味なるLOVEなひと皿を求めてレストランに通う日々。
著者が偏愛する、この季節、このお店のLOVEはいったい何? あなたの次のレストラン選びに参考になること間違いなし!
2016.01.27(水)
文・撮影=北條芽以