マレー半島とボルネオ島北部にまたがる常夏の国、マレーシア。実はこの国、知る人ぞ知る美食の国なのです。そこでこの連載では、マレーシアの“おいしいごはん”のとりこになった人たちが集う「マレーシアごはんの会」より、おいしいマレーシア情報をお届け。多様な文化が融け合い、食べた人みんなを笑顔にする、とっておきのマレーシアごはんに出会えますよ。

マレーシアの鍋「スチームボート」は、バラエティに富んだ具が特徴

 中国は火鍋、韓国はチゲ、タイはタイスキと、東南アジア一帯で食べられている鍋。もちろん、マレーシアにも人気の鍋があります。日本では寒い冬になると恋しくなりますが、常夏マレーシアでは一年中、大勢で卓を囲んで汗を拭き拭き、ハフハフしながら鍋を楽しみます。

マレーシアの鍋「スチームボート」。中央に煙突のある鍋を使うのが基本。この煙突部分から湯気がしゅっしゅっと出ている様子が、蒸気船(スチームボート)に似ていることから、この名前になったそう。

 マレーシアの鍋を「スチームボート」といいます。野菜、きのこ、鶏肉、海鮮、魚のすり身、肉団子、湯葉、餃子、豆腐など、色々な具が入っていて、まるで、茹でて食べられるものなら何でも入れちゃった!? と思うくらいの具だくさんぷり。スープは、鶏のだしが一般的で、あっさりしながらも、海鮮や肉のうまみが加わった滋味深~い味です。

スチームボートの特徴的な具は、揚げ湯葉と餃子。揚げ湯葉はスープにコクを加え、餃子は水餃子感覚で食べる。

 さて、日本の寄せ鍋に必須のタレといえばポン酢ですが、スチームボートに欠かせないのは、真っ赤なチリソース! 店によってチリソースの味は様々で、ライムに似た柑橘の搾り汁を加えたさっぱりした味や、発酵海老の調味料を加えた香りの強いものがあります。

 各自お碗に注いだら、チリソースをすこし加えましょう。すると、それまでは寄せ鍋にそっくりだったチームボートが、アジアンな鍋に大変身! チリソースの中に入っている生姜、にんにくの風味がスープの中に広がり、食欲をぐいぐい刺激するのです。

スチームボートの味の決め手は、チリソース。このソースの味が、店の人気を左右する。ときに、チリソースではなく、唐辛子漬けの醤油タレで勝負をしている店もある。(写真提供 Seikoさん)

 具は、アラカルトでオーダーする場合もありますが、ほとんどの店はセットで注文します。その方が値段もお得。たとえば、スチームボート専門店「好好(Ho Ho)」では、海老、白身魚、餃子、ワンタン、湯葉、豆腐、魚のすり身、肉だんご、鶏肉、野菜。それに、しめ用の麺がセット。この盛り盛りっぷりで、なんと、2人前で36リンギ(約1,000円)という値段。満足感抜群、かつ、財布にやさしいのが、スチームボートの醍醐味です。

「好好」の2人前セット。このボリュームでたったの1,000円!(写真提供 Seikoさん)

 スチームボートのしめは、麺がおすすめです。それも、2種の麺をミックスするのがマレーシア流。たとえば、ビーフンとイーミー(揚げ麺)、ビーフンと卵麺といった具合です。軽く茹でたら、とき卵を回し入れ、卵とじの麺にして召し上がれ~。

2016.01.03(日)
文・撮影=古川 音