ついにミステリアスな儀式が始まった!

結婚の儀式が行われる部屋には、女性ばかりが50人ほど集まっていた。

 チャナッカレ到着当日夜、フリータイムの予定だったはずが、急遽、結婚の前夜祭が行われることになったという。主役のおふたりにも2日前に知らされたというのがトルコらしい(笑)。女性だけの儀式なので男性は部屋の外で待つことになるというのも、何やら秘密めいて興味津々だ。自由参加とのことだったが、もちろん参加! いったい何が行われるのだろうかと、ドキドキしながら会場に向かった。

 19時スタートということなので、ホテルの食事は早めに準備してもらって急いで食べることに。ところが、同行のトルコ人の方が、「急がなくても大丈夫。トルコでは時間通りに始まることなんてないから」と。「いやいや、そうは言っても大事な場面の写真が撮れなかったら困るし」と心配する私の横で、ワインをボトルでオーダーするテーブルも。食事を終えて、歩いて会場に着いたのは20時近かった。そして儀式は……、始まっていなかった(笑)。

 なんとなくトルコの伝統的な古い建物を想像していた私は、学校の一角にあった集会所のような部屋にもびっくり。主役のおふたりが出迎えてくれた。男性の皆さんは部屋の入り口から中を覗いておしまい。新郎も外で待つ。私たち女性は中に入ると、イスを勧められた。

 部屋の中には、私たちを含めて50人くらいの女性が、奥に座っている新婦親族を囲んで壁に沿って座っている。中央がガランとしていた。すると、音楽が始まり、皆さんが踊り始めた。中央が空いていたのは踊るため!?

左:トルコの皆さんは踊りが大好き。とにかく、踊る、踊る、踊り続ける!(笑)
右:テーブルにはトルコのお菓子と炭酸ジュース、そして水など。これだけで何時間も踊りまくる(笑)。

 ステキなブルーのロングドレスを着た、新郎ジェムさんのお母様も楽しそうに踊り出した。新婦の優姫さんはかわいいサーモンピンクのミニワンピで、こちらも踊り始めた。日本人もどんどん巻き込まれていく。輪になって踊ったり、優妃さんを中心に踊ったり。基本は音楽に合わせて腰を揺らしながら両手で指を鳴らす。実はこれ、チャナッカレに着く前にバスの中でトルコ人の方から教えてもらって、私たち日本人も練習済だった(笑)。

 女性だけで1時間半くらい踊った後、優姫さんが中座した。しばらくすると、真っ赤な民族衣装に着替えて現れた。いよいよクライマックス! そして、何やらフリルや花で飾られ、ろうそくが立てられたお盆が運ばれて来た。

左:ケーキのようなものが運ばれて来て、ろうそくに灯が。
右:新婦の優姫さんの前にお盆を運ぶと、この方も踊り始めた。ほかの参加者たちは手のひらに小さなろうそくを載せて踊り始める。

 「ケーキかしら?」などと思っていると、今度は灯りを暗くして、優姫さんを中心としてまた踊りが始まった。そして、新郎のジェムさんが呼ばれ、中央に座った新郎新婦を囲んで再び踊りが始まる。とにかくトルコの皆さんは踊りが大好き!(笑)

新郎のジェムさんが呼ばれて輪の中心に。あれ、ジェムさんは民族衣装じゃないの?

 ろうそくの灯が消えるころ、踊りも終わった。お盆を持った女性がろうそくを外し、優姫さんの前にお盆を持ってきた。ろうそくが刺さっていたのはケーキではなく、染料などに使われる天然ハーブ、ヘナのペーストだった。何の予告もなく儀式が始まった!

手のひらに載せたコインは富の象徴。ヘナで覆うのはお金に困らないようにという意味があるという。

 優姫さんの手のひらに小さなコインが置かれ、その上からヘナが塗られた。それをティッシュで覆い、薔薇の造花を載せてリボンで固定し、レースで覆う。色はすべて深紅だ。ここで、隣に座っていた新郎が新婦のベールを上げておでこにキッス! その後はまた踊りが続く……。

左:頭と手をレースで覆われた優姫さん。
右:最後の儀式はやっぱりコレ! ベールを上げておでこにキッス!

 ここで、私たち日本人は踊り続けるトルコの皆さんに別れを告げて、一足お先にホテルに戻った。手や足にヘナで模様を描くのかと思っていた私は、初めて見る結婚の秘儀に感動! みんなが幸せそうな顔で踊ったステキな夜だった。

2015.12.15(火)
文・撮影=たかせ藍沙