垣根を越え、日本のカルチャーを面白くしたい

――本業であるバンド活動、さらに俳優活動の合間の制作は大変だったのではないでしょうか。

 仕事の合間に脚本の時間を注いで、1年ぐらいかかりました。タイトルと整備工場という舞台は同じながら、まったく違うストーリーを3本書いたんですが、残りの2本は女子が主人公のものと、宇宙人が主人公のもの。でも、それじゃ全然俺じゃないんで、破り捨てました。予算を貯めるために、休みの日も、ほとんど飲みに行っていませんね(笑)。撮影スケジュールは3年前から「卒業制作のために10日間ください」とみんなに言っていたので、10日間で撮るしかなかったのですが、あまりにハードで、途中でカメラマンが交代したり、いろいろ大変でした。

――今後ミュージシャンとして、俳優として、映画監督として、渡辺大知の目標があれば教えてください。

 本格的に脚本を書き始めたことで、自分でも歌詞が良くなったと思うんですが、バンドとしては最高に輝いている状態にしたいです。監督としては、自分が撮りたくなったら撮っちゃうと思うんですよ。だから、そういうタイミングが来たら次回作を撮ると思います。でも、総合的にいえば、日本のカルチャーを面白くして、日本にも面白い奴がいっぱいいることを世界に知らしめたいんですよ。そのためには、あまりタブーみたいなものを気にせず、もっともっと垣根を越えていけたらいいですね。

渡辺大知(わたなべ・だいち)
1990年8月8日生まれ。兵庫県神戸市出身。07年、ロックバンド・黒猫チェルシーを結成。09年、演技未経験ながら2000人の中から『色即ぜねれいしょん』の主演に選ばれ、日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。現在、NHK総合「ドラマ10」にて「デザイナーベイビー ―速水刑事、産休前の難事件―」が放送中。

『モーターズ』
東京郊外の自動車整備工場に勤務し、パッとしない毎日を過ごしている中年男・田中(渋川清彦)。ある日、ひと組のカップルが車の修理で整備工場を訪れ、その女性・ミキ(木乃江祐希)と接するうちに、彼女を好きになってしまった田中は車のパーツを隠してしまう。
(C)2014 Team モーターズ
2015年11月14日(土)~11月27日(金)、新宿武蔵野館にて公開
http://the-motors.com/

くれい響 (くれい ひびき)
1971年東京都出身。映画評論家。幼少時代から映画館に通い、大学在学中にクイズ番組「カルトQ」(B級映画の回)で優勝。その後、バラエティ番組制作を経て、「映画秘宝」(洋泉社)編集部員からフリーに。映画誌・情報誌のほか、劇場プログラムなどにも寄稿。

Column

厳選「いい男」大図鑑

 映画や舞台、ドラマ、CMなどで活躍する「いい男」たちに、映画評論家のくれい響さんが直撃インタビュー。デビューのきっかけから、最新作についてのエピソードまで、ぐっと迫ります。

2015.11.06(金)
文=くれい響
撮影=榎本麻美