映画制作の裏側を見て、さらに映画に魅了される
――そもそも、なぜ映画監督を目指そうと思ったんですか?
もともと小さい頃から、親に連れられて演劇を観に行くことが多かったんですが、さっきも言ったようにお話を作ることが好きだったし、従兄弟が映画の学校に進学したことにも、どこか影響を受けていたと思います。高校でバンドを組んでいたときも、その合間に脚本を書いたり、文化祭の舞台の作・演出などもしていました。どこか、みんなをアッと言わせたい、という気持ちはバンドも映画も一緒でした。バンドとしても初期の頃は自分らで設定を作って、あえて架空のバンドを演じていたんです。例えば、『爆裂都市』に出てきたザ・スターリンやINU(町田町蔵)を今風にポップにしたら、どういう空気感になるか、とか考えながら演じていたと思います。
――その後、映画『色即ぜねれいしょん』の主演オーディションで2000人の中から選ばれますが、やはり映画の仕事に関わりたいという気持ちが強かったということですね。
とはいえ、それまでの僕は地元の小さなビデオショップで少ない小遣いを出して、いろんな映画を観ていただけですから。だから、映画好きなつもりだっただけで、本当の意味で、映画好きになったのは『色即~』に参加させてもらったからです。今まで僕が映画だと思っていた表の世界だけじゃなく、その裏側を見ることができたのが大きかった。単純に、こんなに多くの人が作っていたのか、と思いましたし、監督やスタッフの方たちが悩みながら、100%の力で自分たちの仕事に取り組んでいって、ひとつの作品に向かっていく感じに惹かれました。バンドにも似ていますが、映画のスゴさを肌で感じましたね。だから、役者として参加させてもらったのですが、これから監督としていろんな人と作業することで、自分の想像を超えたものに出会える場を作ってみたいと思ったんです。
2015.11.06(金)
文=くれい響
撮影=榎本麻美