等身大の自分を伝えたかった『モーターズ』

――今回、劇場公開される長編初監督作『モーターズ』は東京造形大学の卒業制作ということですが、題材やテーマはどのように決めたのですか?

 これって自主映画ということで、長編の劇映画を誰かにお願いされたわけじゃないんですよね。だから、なぜ映画を撮るのかというところから始まり、何で映画を好きになったのか、最後には自分とは何だ、というところまで考えたんです。それで脚本を書いているときのゴールは、いいところも悪いところも、自分が好きになれるような世界観が作りたい、というものでした。背伸びせずに、「世界の誰も認めなくても、俺はこの映画が好きだ」と等身大の自分を伝える映画にしたいと。それができないと、観てくれる人の心を動かすこともできないと思ったんです。でも、おかしなことに脚本を書いて、準備していくうちに、この映画がよくなるためには、カッコよくなるためには、自分のエゴはいらないと思うようになったんです。

――そうして完成した作品が、PFFアワード2014にて審査員特別賞を受賞し、今回劇場公開されることについてはどう思われますか?

 PFFのときは、世の中にはスゲエ奴がいっぱいいるな、と思っていて、あまり実感がありませんでした。でも、今年の4月に香港国際映画祭に招待され、半年ぶりに観返したときに、初めて「いい映画だなぁ」と客観的に観ることができたんです。お金がかかっていようがいまいが、ちゃんと自分が出したかった空気が醸し出されていて、映画が動いている感覚を持てたんです。だから、今回の劇場公開はスゴくうれしいし、ほぼ無償で作品に関わってくれたみんなにも改めてお礼を言いたいです。

2015.11.06(金)
文=くれい響
撮影=榎本麻美