歴史を物語るミュージカルと由緒ある会員制クラブ

「パングン・バンダラヤ・ビルディング」ではミュージカルを上演。

 「スルタン・アブドゥル・サマド・ビル」の隣にあるのは、ジャメ・モスクと同じくA・B・ハバックが設計した「パングン・バンダラヤ・ビルディング」。中はとても趣きのある古い劇場なのだが、今もそこでロングランのヒットとなっているミュージカル『MUD』 が上演されている。

ほどよい規模の劇場でミュージカルを楽しむことができる。
天井のデザインにも目を奪われる。

 MUDは、英語で泥。マレーシアが、スズの採掘で栄えた時代から1881年に起きた大洪水を乗り越えて、現在の大開発にいたるまでの歴史が盛り込まれている。1日2回、1時間の上演で60リンギットと安い。英語での上演だが、日本語の解説チラシなどもあるし、ミュージカルなので楽しめそう。

ミュージカル『MUD』
URL http://mudkl.com/

大きなビルに囲まれて立つ「セント・メリーズ・カセドラル」。緑の芝生にレンガと漆喰の教会は別世界のようだ。

 最後に、教会として建てられ、今も使われている「セント・メリーズ・カセドラル」と、かつてはクリケットクラブだった会員制クラブ「ロイヤル・セランゴール・クラブ」を訪れる。

19世紀末の面影をそのまま残す教会の内部。

 「セント・メリーズ・カセドラル」は、元は1887年に丘の上に建てられた木造の教会だったが、その丘を望んで近くに水が流れる風景が英国を思わせるこの地に1895年に移り、レンガ造りの教会となった。少し改装されているが、当時の雰囲気のままで、内部は質実剛健な感じ。当時、参加することが厳守だったという日曜の礼拝が今も行われている。

エスタブリッシュな「ロイヤル・セランゴール・クラブ」をちょっと垣間見る。

 「ロイヤル・セランゴール・クラブ」は、会員制クラブなので一般の人は、通常は入れない。無料ツアーなのに、こんな特別な体験が入っているのに驚き。

 ちょっと覗いただけだが、元はクリケットクラブだっただけに、中には広い芝生が広がり、今でも当時の伝統を残す“女性の入れない”メンズ・バーがある。昔、ご婦人はバーの下に潜んで、殿方が何をしているか窺ったりした時代もあったとか。今は、開放的にドアが開いているが、やっぱり女人禁制なのだという。

大都市クアラルンプールの真ん中に、こんなに広い芝生が。
とても雰囲気のあるバーだが、女性は入れない。外から覗くのみ。

 クアラルンプールのビルに囲まれた一画に、こんな歴史の凝縮されたようなエリアがあったとは。スズの採掘で発展した昔をうかがわせる壮麗な建物を見て回り、最後には会員制のクラブまで覗く、なかなか出来ない体験に大満足の無料ツアーだった。

【取材協力】
マレーシア政府観光局

URL http://www.tourismmalaysia.or.jp/

エアアジア
URL http://www.airasia.com/jp/ja/

小野アムスデン道子 (おの アムスデン みちこ)
ロンリープラネット日本語版の立ち上げより編集に携わったことから、ローカルグルメや非日常の体験などこだわりのある旅の楽しみ方を発信するトラベル・ ジャーナリストへ。エアライン機内誌、新聞、ウェブサイトなどへの寄稿や旅番組のコメンテーター、講演などを通して、次なる旅先の提案をしている。
Twitter https://twitter.com/ono_travel

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2015.09.01(火)
文・撮影=小野アムスデン道子