ファーストクラスで世界一周だなんて手の届かぬ高嶺の花かと思いきや、実はちょっとの工夫でリーズナブルに実現することができるんです。アマゾン川、マチュピチュ、ウユニ塩湖、ナミブ砂漠、南アフリカ、オーストラリア、香港、インドネシア……。トラベルライターのたかせ藍沙さんが体験したとっておきの旅を、ここに公開!

切り立った山を越えた静かな入り江にあるリゾート、「シックスセンシズジギーベイ」。ゲストは、パラグライダーで空からのチェックインを選ぶことができる。ゲートから山の上まで上ったところで車を降り、荷物は先に車でリゾートへ、ゲストはパラグライダーでリゾートへと飛ぶ。上空500メートルまでふわりと舞い、リゾートを眺めてからビーチへ。わくわくドキドキのチェックインだった!(撮影=たかせ藍沙)

崖っぷちから高度500メートルまで舞い上がる!

「シックスセンシズジギーベイ」のゲート。ここから山の斜面を四輪駆動車で上っていく。

 「滞在ゲストはチェックインを、車か、船か、パラグライダーか、3種類から選ぶことができます」との説明に、「えっ!?」と会場がどよめいた。

 2010年に東京で、タイに本社がある「シックスセンシズ ホテル リゾート スパ」が開いたレセプションでのこと。翌年にオープンを控えた、オマーンのシックスセンシズジギーベイの説明が始まった直後だった。ユニークなアイデアに誰もが驚いた。その、心が躍ったプレゼンテーションから5年、やっと念願叶って体験することができた。

 ドバイ国際空港から車で北東へ約2時間、このリゾートがあるのは、首都のマスカットがある国土とは離れた、ペルシャ湾とオマーン湾の間に突き出した半島の先端、アラブ首長国連邦に囲まれた飛び地となっている場所。ハブ空港から車でアクセスできる便利なロケーションだ。

坂の途中。パラグライダーに乗る前から崖っぷちのスリルを味わいつつ山の上へ。

 途中、車の中から書類を渡すだけという簡単な国境を通過し、20分ほど走ると民家がほとんどなくなり、小高い山に囲まれた荒涼とした風景となる。「シックスセンシズ」の看板の先に、ゲートがあった。その後ろには急斜面にジグザグに細い道が貼り付いていた。「この山を越えるとリゾートがあるのね!」と胸が高鳴る。

 車一台がやっと通ることができるような幅の道を、四輪駆動車はゆっくりと上っていく。そして、ピークを少し越えたところで道から外れた。パラグライダーの離陸地点だった。実は、直前まで迷った。恐かったからではなく、自分が飛んでしまったらパラグライダーで飛んでいる人の写真が撮れないからだ。

 すると、連絡を取り合っていた広報のハニーさんが、「喜んで代わりに私が飛ぶわ!」と、とても嬉しそう。その笑顔を見て、どんなに楽しいのか想像できた。そして、携帯電話をカメラとして彼女に預け、撮影してもらうことに。

イケメンインストラクターがパラシュートを上げた。もうひとりのイケメンに支えられてスタンバイした直後に身体が浮いた。(撮影=ハニーさん)

 基本的には、何も持って行ってはいけないのだけれど、自己責任ということで、コンパクトデジカメを持って飛ぶことに。私自身は空からのリゾートを撮ろうというわけだ。ということで、デジカメ片手にヘルメットをかぶり、イケメンインストラクターのイッソさんと一体化しているハーネスを身につけると、「座って」と後ろから。私のハーネスは座れるようになっていた。これなら楽だし、リラックスできる。と思った瞬間に身体が浮いていた!

左:崖から離れて、ぐんぐん上昇していく。(撮影=ハニーさん)
右:高度500メートル付近。見失いそうに遠い?(撮影=ハニーさん)

 風に乗って一気に空へ! 「今、高度400メートルだよ」と、イッソさん。旋回しながら更に上へ。すると、「今日はコンディションがいいから500メートルを超えた!」と。さすがに岩山が遥か下に見えてちょっぴり怖かった(汗)。

地面は足の下の遙か遠く。その間には何もない! 左側に「シックスセンシズジギーベイ」が見えてきた。右側はもともとあった漁村。

 それから徐々に高度を下げてビーチを目指す。太陽の位置がちょうどよくて、海のブルーが際立っている。ゆるゆると旋回しながら降りてきたと思ったら、着地直前でいきなり急旋回を2回! 「ひぇーーー!」と固まったところでビーチに。「立ち止まらないで!」とのイッソさんの声で我に返った。着地の勢いのまま少し小走りしたところでパラシュートが地面に着いた。

1.6キロメートルのロングビーチにある「シックスセンシズジギーベイ」が空から一望できる。リゾート手前のビーチに降りた。

 パラグライダーは初めてだったけれど、インストラクターのイッソさんと一緒なので安心感があるし、こんなに楽しいとは思わなかった。ジギーベイに行くときには、迷わず「パラグライダーチェックイン」を選ぶべし!

2015.08.21(金)
文・撮影=たかせ藍沙