ファーストクラスで世界一周だなんて手の届かぬ高嶺の花かと思いきや、実はちょっとの工夫でリーズナブルに実現することができるんです。アマゾン川、マチュピチュ、ウユニ塩湖、ナミブ砂漠、南アフリカ、オーストラリア、香港、インドネシア……。トラベルライターのたかせ藍沙さんが体験したとっておきの旅を、ここに公開!

サバンナには乾季でも水が干上がらない場所がある。動物たちの乾きを潤す大切な水場だ。そんな場所にゾウの親子がやってきた。子ゾウたちが嬉しそうにはしゃいで(そのように見える)水の中を歩き回っている。一瞬、生後間もないような小さなゾウが2頭、母親のすぐ後にちょこまかと歩いているのが見えてほのぼのとした気持ちにさせられた。(撮影=たかせ藍沙)

ライオンに出会った後で、車を降りて……

早朝のゲームドライブは夜明けとともにロッジを出発。まだ薄暗い川を四輪駆動車でわたった。

 ずっと滞在してみたいと思っていたロッジがあった。欧米で広く読まれている旅行雑誌「コンデナスト・トラベラー」の読者投票で、毎年上位に名を連ねている「シンギタ」のロッジだ。

 前日に滞在していた「キャンプ・ジャブラニ」からは車で移動。約2時間の距離だ。途中、村を通り過ぎ、ゲートを抜けるとサビサンド私営動物保護区となる。この約260平方キロメートルの保護区と、南アフリカでもっとも知られるクルーガー国立公園との間には柵がなく、動物たちは自由に行き来できるのが特徴だ。

 「シンギタ」が所有する「シンギタ・サビサンド」は、保護区内の約180平方キロメートルを占める。ゲートから20分ほど走るとロッジに着いた。

 「シンギタ」では、早朝と夕方の2回、3~4時間かけて「ゲームドライブ」と呼ばれるサファリを楽しむことができる。時間がきちんと決まっていないのは、その時に出会う動物次第だから。実際に2日目の夕方、私は日が落ちてからもライオンの近くにいたためにワインテイスティングの最初の1杯を逃したことも。ここではゲームドライブが最優先されるので誰も文句は言わない。

ウォーターバックのカップル。角があるほうがオス。

 翌早朝は午前5時にモーニングコール。5時30分にコーヒー、ジュースとパンなどの軽食をとってから6時前には四輪駆動車で出かける。ネイチャーガイドがふたりに、ゲストは私含めて5人。まだほの暗い中、川をわたり、暫く走った。

左:朝日を浴びるオスライオンに遭遇! 車の前を横切った。
右:興奮する私たちを一瞥して歩き去った。ほんと、王者の風格!

 すると、目の前にオスライオンが! まだ暑くない早朝なので昼寝をすることもなく、ゆっくりと歩いていた。ときどきこちらに視線を向けるものの、車がゆっくりと付いていっても気にしない様子。「さすが、百獣の王は風格が違う!」などと感動してしまった。

草むらの中に何かがいた。よく見ると10頭近いメスライオンが雑魚寝状態でお昼寝中だった! あとから来た1頭もこの後にゴロリ。

 日が高くなってくると、今度はメスライオンの雑魚寝(決して雑魚ではないけれど、笑)に遭遇! あとからやってきたメスライオンもゴロリ。リラックスしきって仲よく昼寝をしている姿は、まるで子猫の姉妹のよう。「何頭いるのかしら」とみんなで数えてみても、密着しすぎていて数が分からないほど。猛獣ということを忘れて「かわいい!」と思ってしまった(笑)。

車から降りて近づいたら、まるで私たちのためにポーズを決めてくれたようなキリンの親子。「キャンプ・ジャブラニ」でも動物の子供たちをみかけたけれど、ここでもかわいいキリンに遭遇!

 その後には、キリンの親子に出会った。すると、ネイチャーガイドのアンディさんが、「車から降りて、キリンを見に行きましょう」という。「え? 降りて大丈夫なの!?」と驚くと、彼女は車から降りてライフルを手にした。空砲で動物を驚かせるためで、決して彼らを撃つことはないのだそうだ。

 「私から離れないでね」という彼女の後にぴったりついて、ゆっくりとキリンに近づく。すると「ここで記念写真を撮りましょう」と。キリンをバックにそれぞれ写真を撮らせてくれた。たくさんのライオンを見た後だけに、ドキドキしながらの記念撮影だった(笑)。

見通しの利く場所で、ネイチャーガイドのアンディさん(右)とヴシさんが、四輪駆動車の後ろに飲み物とおやつを用意してくれた。ロッジに戻る前にひと休み。

2015.07.31(金)
文・撮影=たかせ藍沙