ファーストクラスで世界一周だなんて手の届かぬ高嶺の花かと思いきや、実はちょっとの工夫でリーズナブルに実現することができるんです。アマゾン川、マチュピチュ、ウユニ塩湖、ナミブ砂漠、南アフリカ、オーストラリア、香港、インドネシア……。トラベルライターのたかせ藍沙さんが体験したとっておきの旅を、ここに公開!

早朝のデッドフレイ(死の沼)。観光客はまだいない。ここは、数百年前は沼地だったのだという。白い粘土質の沼底は干からびてひび割れていた。遥か昔に枯れた木々は乾ききり、当時の姿のまま腐ることもなくたたずむ。よく見ると、大きなビデオカメラを持った男性が撮影していた。夜明け前から撮影していたようだ。どんな美しい映像を撮影したのだろう。(撮影=たかせ藍沙)

世界でもっとも赤く、高く盛り上がった砂丘

リトル・クララのテラス。日差しの強さがハンパじゃない!

 この風景を見たかった! 北アフリカのサハラ砂漠に沈む夕陽、ブラジルのレンソイスにある白砂漠も素晴らしかったけれど、どうしても行きたい砂漠があった。南部アフリカのナミビアにあるナミブ砂漠だ。2012年末の紅白歌合戦で、アーティストのMISIAさんがアフリカから生中継で歌ったとき、背景に映っていた赤い砂漠を覚えているだろうか。

 ナミブ砂漠は、約8000万年前にできたといわれる世界最古の砂漠で、その広さは約5万平方キロメートルの細長い砂漠だ。2013年にはユネスコの世界遺産に登録された。海に面している珍しい砂漠でもある。世界でもっとも赤く、砂丘の高さがもっとも高いことでも知られ、その色と形状から「世界でもっとも美しい砂漠」と称されることも。高さ300メートルを超える赤い大砂丘が連なる光景を、どうしても見たかった。南米から、ロンドン、南アフリカを経由して、やっと辿り着いた。

一戸独立型の客室はプール付きで、カーテンを開けると遠く砂丘まで望むことができる。

 滞在先のリトル・クララにチェックインして部屋に荷物を置き、まずはサンセットドライブに出かけることに。リトル・クララは、370平方キロメートルもの私有保護区の中にある。リトル・クララをはじめ、アフリカ各地に宿泊施設を経営するウィルダネス・サファリが所有する保護区だ。ここは、ナミブ・ナウクルフト国立公園の、砂丘にもっとも近いゲートに隣接している好立地でもある。まずは私有保護区の中をドライブ。遠くに砂丘が見える。

オリックスに出会った。砂漠地帯にこんなに大きな動物が暮らしているとは驚いた。

 砂漠というと、乾ききっていて生き物もいないと思われがちだが、ナミブ砂漠周辺には驚くほどたくさんの動植物が生息している。

 オリックスやインパラ、ダチョウなどの大型のほ乳類、鳥類をはじめ、1000年以上生きる(2000年以上の個体もあるらしい)という植物ウェルウィッチア・ミラビリスや、身体に付着した霧の水分を飲んで生きるというミズカキヤモリなど、過酷な環境に適応した珍しい生き物たちがたくさん暮らしているのだという。さらに南のエリアでは、雨季のほんの2~3週間だけ、砂漠の周囲に花が咲き乱れることがあるのだとか。

ドライブの最後に、ガイドがプチバーをオープンしてくれた。アフリカのリキュールを使ったカクテルと、南部アフリカ名物のビーフジャーキーとともに、夕陽を愛でた。

 陽が傾くと、ガイドのヴァレンチヌスさんが車の外に即席のバーを作ってくれた。そんな生き物たちに思いを馳せつつ、赤い砂漠を更に赤く染めながら沈んでいく夕陽を見送った。

リトル・クララに戻ると地平線には微かに光が残っていた。
夕食はテラスで。ときどき、ライトアップされた水場に目をやりながら。

 リトル・クララに戻ると、地平線はまだ微かに明るかった。テラスで夕食をとることに。テラスの前にある木々にはほとんど葉が付いていない。その一画がライトアップされていた。そこには小さな水飲み場が造られていて、食事をしていると動物たちが水を飲みにやってくることも。美しい風景と美食、そして美味しいワイン。明日はいよいよ大砂丘だ。

リトル・クララにはワインセラーもあり、ここで夕食を楽しむこともできる。
ウユニ塩湖では新月だった月が、ほぼ満月。木々が月明かりに照らされ、濃い影を落としていた。満天の星は同じでも、まったくちがう表情の夜。

2015.07.17(金)
文・撮影=たかせ藍沙