ファーストクラスで世界一周だなんて手の届かぬ高嶺の花かと思いきや、実はちょっとの工夫でリーズナブルに実現することができるんです。アマゾン川、マチュピチュ、ウユニ塩湖、ナミブ砂漠、南アフリカ、オーストラリア、香港、インドネシア……。トラベルライターのたかせ藍沙さんが体験したとっておきの旅を、ここに公開!
もう間に合わない! そのフライト、待って~!!
チリのパタゴニア地方での取材を終え、次なる目的地への移動が始まった。移動先はアフリカのナミビア。世界一周でもっとも行きたかった場所、ナミブ砂漠を目指し、ロングフライト2本を含む6フライトで、5カ国にわたる大移動だった。
ルートは次の通り。チリのテムコ→サンチャゴ→ブラジルのリオデジャネイロ(機中泊)→イギリスのロンドン(機中泊)→南アフリカのヨハネスブルグ→ナミビアのウィントフック→ソススフレイ。移動前日にテムコで1泊する必要があるので、3泊3日がかりとなる。
まずは、朝のフライトでチリのテムコから首都サンチャゴへ。最初のトランジットで事件が起こった。ここではチェックインし直す必要があるのに、それとは別に発券カウンターに行く用事があった。荷物をピックアップして発券カウンターへダッシュ!
チェックインカウンターは目の前なので、当初は安心していた。ところがカウンターでは処理ができず、航空会社のオフィスに電話して手続きをすることに。カウンター内の方が電話で担当者を見つけて電話口まで呼び出してから、受話器を渡してくれた。本社の担当者とあれこれやりとり。これに予想以上の時間がかかった。
出発時刻まで1時間を切ろうとしていた。アッパークラスのチェックインとはいえ、そろそろマズイ! 電話を預けてチェックインしようにも、発券カウンターは無人になってしまって、呼んでも誰も来ない状況に。電話の相手は「レファレンスナンバーをあげるからもう少し待って」と言ったきりで保留音が鳴るばかり。固定電話だから動けない。「先にチェックインするべきだった!」と後悔した。
こんなとき、1人で行動していると本当に困る。「ああ、ここに誰かがいてくれたら~!」と冷や汗状態に。やっと手続きが終わってチェックインカウンターに急ぐと、その手前で止められた。「このフライトのカウンターはもうクローズ」と。「ええっ! ファーストクラスなのよ、何とかならないの!?」と言っても表情ひとつ変えずに中に入れてくれない係員。「がーーーん!!!」。この先の5フライト、ドミノ倒しで乗れなかったらどうしよう!
がっくり肩を落として、再び発券カウンターへ。今度は先ほどの若い男性ではなく、かなりデキそうな年配の女性が座っていた。「乗り遅れたの」と途方に暮れた私がeチケットを手渡すやいなや、彼女は真剣な顔つきでパソコンのキーボードを連打し始めた。その20分ほどの時間が、2時間にも3時間にも思えた。その間ずっと、もし飛べなかったらどうするか、頭の中でぐるぐるとシミュレーションしていた。
すると、ふいに女性が顔を上げて言った。「サンパウロ経由で手配し直したわ。大丈夫、ロンドンからのフライトには間に合う」。新しいeチケットをプリントする音。しかも、変更手数料も一切不要! ファーストクラスが1本ビジネスクラスにダウングレードしたものの、もう、彼女を抱きしめてキスしたいくらいの気持ちだった! 空港ラウンジも取材しようと、トランジットに余裕があるスケジュールにしていたことが幸いしたのだった。
この後に分かったのだけど、ビジネスクラス以上のチェックインカウンターはひとつ上のフロアにあって、チェックインも手荷物検査もまったく待たなかった。最初にここに来ていれば間に合ったかもしれない。サンチャゴを利用する方、ぜひこちらをご利用あれ。さて、冷や汗を拭き拭き、気を取り直して次の移動へ!
2015.07.10(金)
文・撮影=たかせ藍沙