ファーストクラスで世界一周だなんて手の届かぬ高嶺の花かと思いきや、実はちょっとの工夫でリーズナブルに実現することができるんです。アマゾン川、マチュピチュ、ウユニ塩湖、ナミブ砂漠、南アフリカ、オーストラリア、香港、インドネシア……。トラベルライターのたかせ藍沙さんが体験したとっておきの旅を、ここに公開!
標高3400メートルのクスコで早くも息切れ!
街の中心でもあるアルマス広場とカテドラル。インカ時代の神殿跡に建てられた。
空港でターンテーブルからスーツケースを降ろしたとき、そのほんの少しの動作でいきなり息切れがした。何気なく行っていることに、標高3400メートルのクスコでは「酸素が足りない!」と身体が反応していた。迎えの車に、他の方に遅れまいと小走りで向かったところ、ガイドの方に言われた。「走らないでください! 重い荷物は持たないでください!」と。が、時すでに遅しで、心臓がバクバクして息が荒くなっていた!
細い路地と急な坂が多いので、人も車も行き来がたいへんだ。
ファーストクラスで世界一周の旅、2カ所目の目的地はマチュピチュ。その玄関口となる街がクスコだ。アマゾン川クルーズからペルーの首都リマに戻り、空路でクスコへ。海辺にあるリマから、一気に標高3400メートルに飛んだのだから身体がついていかないのも無理はない。
日本から持参した高山病予防薬は、前日にリマで飲み始めた。ときどき指先がピリピリと痺れるのはこの薬の影響だ。この日はクスコ市内を観光した後、宿泊したのは標高2800メートルの場所。少しずつ身体を慣らしていくためだ。
クスコの街で最も有名な石「12角の石」。カミソリの刃1枚も通さないと言われている石組みの中でひときわ大きな石。なぜ12角なのかは、1年の12カ月を意味するとか、家族の数とか、諸説あって人々のロマンをかき立てている。
クスコは、インカ帝国の首都として、政治、文化、経済の中心として繁栄を極めた街。カミソリの刃1枚も通さないほど精巧に組まれた石組みにその技術の高さが残されている。道を歩きながら、石垣を眺めているだけでインカの人々に思いを馳せることができる街だ。
左:土産物店には、色鮮やかな伝統色の布地で作られたスニーカーがあった。右:民族衣装を着てチップを稼いでいる子供たち。世界的観光地で、きっと家族の暮らしを支えているのだろう。
沿道の土産物店には色鮮やかな民族衣装や小物が陳列されていて、石垣とのコントラストが目を引く。高地にある街だけに急な坂も多いが、ここでも「ゆっくり歩いてください」「気分が悪くなったら深呼吸を」と注意を喚起されながら歩く。
サント・ドミンゴ教会(太陽の神殿)のパティオ。インカ時代の石組みは、1960年から復元が続けられていて、教会の裏手で見ることができる。
石組みに関する有名な逸話がある。観光名所のひとつ、サント・ドミンゴ教会での出来事だ。ここは、インカ時代にはコリカンチャと呼ばれる黄金で飾られた太陽の神殿だった。スペイン人征服者たちは黄金を剥がし、上部を壊して教会を建てた。その後、大地震がクスコの街を襲ったとき、上部の教会は倒壊したのに、土台として残されていたインカの石組みはビクともしなかったのだという。そんなストーリーを聴きながらクスコを後にした。
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- 文・撮影=たかせ藍沙
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