ファーストクラスで世界一周だなんて手の届かぬ高嶺の花かと思いきや、実はちょっとの工夫でリーズナブルに実現することができるんです。アマゾン川、マチュピチュ、ウユニ塩湖、ナミブ砂漠、南アフリカ、オーストラリア、香港、インドネシア……。トラベルライターのたかせ藍沙さんが体験したとっておきの旅を、ここに公開!
ゾウの歩みとともに体が上下に揺れる
午前中のフライトでヨハネスブルグから北東へ約1時間、フーデスプリットに着いた。そこから次の目的地「キャンプ・ジャブラニ」までは車で約20分。ここから、エレファント・バック・サファリで人気のロッジを目指す。途中、ゲートを通り、カパマ私営動物保護区へ。ここは、南アフリカでもっとも知られるクルーガー国立公園の西隣に位置する。チェックインとランチを済ませ、日差しが和らいできたタイミングで、さっそくエレファント・バック・サファリに参加することに。
右:鼻に触らせてもらった! よく動くのでやわらかいのかと思ったら、意外とごわごわしていて堅かった。
メイン棟から徒歩20メートルほどの場所に、ゾウに乗るためのプラットホームがある。そこに、ゾウたちがのっしのっしとやってきた。滞在ゲストのところに、そのうちの1頭が近づいてきた。ロッジ名にもなっている「ジャブラニ」と名付けられたゾウだ。「ジャブラニ」とは、「喜ぶ」を意味するという。
そこで鯉の餌を大きくしたような餌を渡された。ジャブラニの鼻先に差し出すと、器用に鼻でつまんで口に入れる。そして、一緒に写真を撮ったり鼻に触ったりすることができる。なんてやさしい眼差し! 背中に乗る前から感動してしまった(笑)。でも、本番はここから。やぐらからゾウの背中に乗って、いざ、出発!
ラッキーにも、私はジャブラニに乗せてもらうことができた。ゾウ使いのフォスターさんの後ろに乗り、ゆっくりと歩き始めた。ウィロウィロでのホースライディングよりも高いので見晴らしは抜群だ。
少し歩いたところでキリンと遭遇。通常なら見上げてしまうキリンも、目線が同じくらいの高さなので、サバンナの風景が違って見える。ゾウの歩みとともに身体が上下に揺れるのも楽しい。エンジンの音がしないので、ほかの動物たちもこちらを気にしていない様子。四輪駆動車でのサファリもエキサイティングだけれど、エレファント・バック・サファリは、もっと自然に寄り添っている感覚だ。
ゾウ使いのフォスターさんは、ジンバブエ出身。ジャブラニと同じくジンバブエからやってきたという。でも、ジャブラニ担当というわけではない。ゾウ使いとゾウの組み合わせは毎日変わるという。ゾウがひとりのゾウ使いに慣れてしまうと、もし、ゾウ使いがロッジを辞めたときに、ゾウは他の誰にも心を許さなくなってしまうからだ。
そんな話を聞いていたら、ジャブラニが鼻で餌を催促してきた。「お腹が空いてるのね」というと、「彼はいつもお腹が空いているんだよ」と。ジャブラニにはまだ彼女もいないのだとか。早く見つかるといいな。
1時間ほど歩いたところに別のプラットホームがあり、そこでゾウから降りる。すると、そこにはカナッペと飲み物でひと休みするための「サンダウナー」が用意されていた。夕陽を眺めながら、滞在ゲスト同士でゾウに乗った感動を共有できるのだ。イギリス人の男性は、オーストラリアに留学中の娘とその友人と、ケープタウンで待ち合わせしてここに来たのだという。なんとスケールの大きな待ち合わせだこと! そんな時間を過ごした後は、四輪駆動車でロッジへと戻る。
2015.07.24(金)
文・撮影=たかせ藍沙