焼き名人のシェフがまたひとり現れた!

 前菜、パスタにキャッキャしている間も、シェフがてきぱきと働く様子はすぐそこに見ることができる。焼く場所は遠いが、私たちのものと思われるチキンがジュージューされたり、寝かされたりを繰り返し、鋭意進行中という感じで、ついつい様子をうかがってしまう。そしていよいよ解体を経て我々のもとにやってきた。

 久しぶりに食べた鶏もも肉の炭火焼きという直球メニュー。4分割して、ディジョンマスタードだけを添えて、とにかくシンプルだ。カリカリに焼き上げられた肉の断面を覗くと「なんて美しい!」。ギリギリの火入れ、保たれた肉汁、弾力、そして“おいしそうさ”が目に飛び込んでくる。見た目が美しいというのはおいしい証。そして食べてみると、やっぱり素晴らしい! これまで他店で何度も食べている鶏もも肉の炭火焼きだけれど、これほど見事な焼き加減で、炭の香りがパッと華やかなケースも珍しいかもしれません。

鶏もも肉という食材の魅力をがっつり引き出した炭火焼き。これは名人芸!

 おいしい肉をおいしく焼く。だから、塩とマスタードだけでよし! イタリアンってそういうものだよな~。とっても潔いシェフの技量の高さと自信に感服してしまったメインのひとときであった。

 デザートはアメリカンチェリーにロマノフをどっさり添えたもの。マスカルポーネと生クリームをふんわりと合わせたロマノフはこれまた大好物なのだが、あまりにもシンプルなのでレストランでそうそう出会えない。こちらのロマノフは、目の前でカッカッカッとクリームを立ててくれ、たっぷりとのせてくれて、なんという多幸感! 最後の最後まで「次にきたらまたこれ頼んじゃうな~」と思わせてくれる味であった。

アメリカンチェリーとロマノフ。しっかりと手で立てたクリームのきめ細やかなこと。最高でした。

 オンライン予約やロッカーの新しさだけでなく、お皿やカトラリーも色とりどりで料理にとても合いつつ、いままであまりレストランで出会わなかったタイプのもの(鶏が出てくるときは和食屋さんでおちょこを選ぶように美しいナイフを選ばせてくれた)。音楽も素敵で、細かいところではスタッフが使っている文具までかっこいい。食材も、道具も、システムも。シェフが選び抜いたものをビシッと使う。男らしいわ~、ということで、男性客が多いことも納得。人気店は女性に占有されがちだけど、ここはなんとなく食いしん坊男性に集ってほしいなぁ。

ゴロシタ.
東京都渋谷区恵比寿南1-18-9 TimeZone ヒルトップビル 4F-A
電話番号 03-5794-8568
Facebook https://www.facebook.com/golosita.ebisu
[2015年5月来訪]

北條芽以(ほうじょう めい)
神奈川県鎌倉市生まれ。情報誌編集者を経てフリーライター、料理本の編纂を行う。好きなのは炭水化物(特にごはん)とお肉の組み合わせ。お酒はあまり飲めない。「左手にごはん茶碗を!」

Column

北條芽以のLOVEレストラン

美味なるLOVEなひと皿を求めてレストランに通う日々。
著者が偏愛する、この季節、このお店のLOVEはいったい何? あなたの次のレストラン選びに参考になること間違いなし!

2015.06.10(水)
文・撮影=北條芽以