LOVE:パスタもぐもぐ
亀戸のイタリアン、前菜から心鷲掴み。

亀戸|メゼババ

恐ろしいほど好みのタイプだったカルパッチョ。

「亀戸のイタリアン行った?」なんど聞かされ、スマホの写真を見せられたことでしょう。そうこうしているうちにフェイスブックにも「亀戸」「イタリアン」「美味しすぎます」などの文字が並ぶように。なんだか話題沸騰中なのね、とひねくれ者の私は傍観決め込む……かと思いきや、そうさせない、もうひとつのキーワードがあった。誰もが「貧乏人のスパゲッティ」というパスタ料理を褒め称えているのだ。写真を見ると、なんだか卵が混ぜ込まれた、確かに貧乏っぽいパスタ。これは気になって仕方がない!

 というわけで予約を取り、亀戸の町へ。意外と近いと思いきや、結構遠かった。場所が面白くて、大通りをちょっと曲がったところに飲み屋さんがずらりと並び、まるで昭和のドラマのセットのよう。見知らぬ町でなんだか懐かしいような風景に出くわし、心落ち着きます。

 さてさて、お店はカウンターのみ。連絡ミスでひとり多く来ちゃったので、急場しのぎの小椅子を出していただき、ぎゅうぎゅうのデコボコ座り。魅力のひとつであろう狭小感も堪能。立ったり座ったりスクワットしながら黒板のメニューを選ぶ。ワイン好きのみなさんはひとりですべてをこなす多忙なシェフを捕まえて相談する。水は常温のサンペレグリノをサービスで出してくれて最高なんだけれど、お金にならないのでちょっと申し訳なくなっちゃう。

この黄金色のフワフワを豆と混ぜながら食べるのです。

 さて、前菜はカツオのカルパッチョと豆にからすみがかかったもの。最近、「しんなりした紫たまねぎが甘酸っぱい調味料みたいにまとわりついている、脂ののった魚が分厚く切られたカルパッチョ」という非常にピンポイントな好みがあるのだが、まさにその通りのものが出てきてびっくり。ほんと、再現されたみたい。どこぞの郷土にあるものなのだろうか。多忙な店主には聞くタイミングを逸した。豆&からすみも忘れられない、おかわりしたかったくらいの前菜。ほこほこに煮上がった豆に、からすみどっさり。いじいじと潰したり混ぜたりしながら食べる幸せ。椎茸と穴子のフリットも食べたけど、衣の感じが違って、大胆なようで繊細。椎茸はアワビのようにむっちり、穴子は少し軽く、場所によって味が違うくらい素材の味を押し出している感じ。

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2014.04.03(木)
文・撮影=北條芽以