CREAリニューアル新装刊、「秘密のパリ」特集にちなみ、本コラムでも“パリの空気を感じられる東京のレストラン”を4回連続でご紹介します。19世紀の美食家、ブリア・サヴァランが「ふだん何を食べているのか言ってごらんなさい、そしてあなたがどんな人だか言ってみせましょう」と『美味礼賛』に書いたように、食は人を表すもの。パリの人のキレイをつくる、パリの食にフォーカスをあててみます。スペシャル企画として、各レストランから特別プレゼントも! ぜひご応募ください。
帝国ホテルの伝統を継承するレストラン
帝国ホテル 東京「トラディショナルダイニング 『ラ ブラスリー』」
メニュー名:ラ ブラスリー特製 エスカルゴの香草バター焼き、オニオングラタンスープ、クレープシュゼット
“パリシリーズ”第2回目でご紹介するのは、帝国ホテル 東京の「トラディショナルダイニング 『ラ ブラスリー』」(以下「ラ ブラスリー」)です。「ラ ブラスリー」といえば、初めてこのお店の存在を知ったときのことを思い出します。それはまだ私が大学生の頃でした。なにかの用事で日比谷の帝国ホテルの地下へ下りた私は、そこに広がるホテル独特の「アーケード」がもの珍しくて、フロアを一周してみることに。ブティックや宝石店、器のお店、バッグのお店などが並ぶじゅうたん敷きのフロアは、まさに“厳選された高級感”いっぱい。ここで買い物するのってどんな人!? ……と思いつつ、未知の世界にひかれて地続きのタワー館地下にも行ってみると、そちらは子どもでも名前を知っているような名店が揃うレストランフロアでした。そんな中で、異質なほど華やかなお店がありました。それが「ラ ブラスリー」。バラの生花を飾った入口はかなりゴージャスなものの、どこかにウェルカムな雰囲気もあり。ドアの向こうには外国が広がっていそうな、大人な雰囲気でした。
その後、別な機会に帝国ホテルに来て「ラ ブラスリー」の前を通ることが幾度かありましたが、なんだか気になって仕方ありません。そこでついに、平日のランチを予約してみました。仕事の合間に訪れた店内はアールヌーボー調のインテリアで、天井が高く、真っ白なクロスがかかったテーブルがゆったりと並んでいます。最近のパリのビストロはもっとモダンだったり、ニューヨーク風だったりしますが、「ラ ブラスリー」は“古き良きパリのビストロ”の雰囲気。「トラディショナル ダイニング」をコンセプトとし、帝国ホテルの伝統を継承するレストランにふさわしい雰囲気です。
食事中に感心したのは、スタッフの動きやサービスが機敏でエレガントなこと。ゲストを恭しく扱い、丁寧に給仕してくれて、背筋が伸びる気持ち。そしてとっても優雅な気分になれるのです。仕事の合間に「ラ ブラスリー」に行けること自体が優雅なのですが、いつもこんな生活をしているわけじゃありません(念為)。
さて、帝国ホテルといえば、開業以来、名料理人オーギュスト・エスコフィエに代表される正統派フランス料理を追求し、歴代料理長らによって生み出されてきた名物料理は「シャリアピンステーキ」「ダブルビーフコンソメ」「タンシチュー」など色々。そんな“帝国ホテルの味”を主役に、エスカルゴやオニオングラタンスープなど、パリのビストロの古典的メニューを揃えているのが「ラ ブラスリー」です。香草バター(ガーリックとパセリをまぜたバター)が染み込んだ「ラ ブラスリー特製 エスカルゴの香草バター焼き」は、驚くほどの柔らかさ。そしてタマネギの甘みとグリュイエールチーズの香りが溶け合った「オニオングラタンスープ」は、自然に顔がほころぶ美味しさで、表情筋がほぐれそう!? こんなメニューを味わうと、クラシックなパリのビストロにタイムスリップしたかのようで、うっとりした心地になります。つい先日「ラ ブラスリー」で来日フェアを行ったパリのパラスホテル「ル・ロワイヤル モンソー ラッフルズ パリ」総料理長のローラン・アンドレ氏も、「カウンターの雰囲気がパリっぽいね」と言っていましたから、この空間がパリテイストであることは間違いありません(笑)。
<次のページ> デザートはワゴンサービスの「クレープシュゼット」を!
2014.02.14(金)