音楽ビジネスとITに精通したプロデューサー・山口哲一。作詞アナリストとしても活躍する切れ者ソングライター・伊藤涼。ますます混迷深まるJポップの世界において、この2人の賢人が、デジタル技術と職人的な勘を組み合わせて近未来のヒット曲をずばり予見する!
さて、近々リリースされるラインナップから、彼らが太鼓判を押す楽曲は?
【次に流行る曲】
大森靖子「きゅるきゅる」
大森靖子は戸川純を彷彿とさせる
伊藤 今回は大森靖子っていうアーティストなんですけど知ってますか? 9月の新譜を調べていて遭遇したんですけど。
山口 伊藤さん遅いっすよ(笑)。2年くらい前から、噂を聞いていて、一度、ライブ観てみたいなと思っていました。
伊藤 まじっすか(笑)。大森靖子に限らずですけど、この手の情報にポジティブですよね、どこでチェックしているんですか?
山口 ソーシャルメディアのお陰ですね。FacebookやTwitter上で、友人たちの投稿で知るパターンです。「赤い公園」もそうでしたけれど、アンダーグラウンドのシーンで頭角を現すアーティストは、私が目利きと認めている人たちが、いち早くチェックしています。5~6人ぐらいが騒ぐと自然に目に付きますし、その騒ぎ方の様子と、騒ぐ人たちの組合せで、だいたいどんなタイプのアーティストか予測できるんですよ(笑)。大森靖子の場合は、去年の後半あたりからヒートアップして、PARCOが広告で取り上げるという噂を年明けくらいに聞いて、これはブレイクするなと思いました。
伊藤 なるほど。僕はどメジャーシーンにいて、アンダーグラウンドを疎かにしてきちゃったんで。それにどメジャーシーンにいると、アングラに足を踏みこんじゃいけない空気があるんですよ。お前はこっちの人なのか? それともあっちの人なのか? みたいな。後輩にオタク女子がいて、面白がられてはいたんですけど、仕事面ではちょっと異物に思われていましたね。これでも今は視野が開けたほうなんですけど、まだまだアンテナの感度が低いですね。
今はアイドルブームと言っていいと思うんですが、大森靖子はそこに現れた突然変異アイドルといった印象です。まぁ言ってみればアイドルの皮をかぶったアーティスト、彼女の持つ世界観は尖ってますね。昔でいうところの戸川純みたいな、なんかキレたら危ない女の子って感じですね。
山口 戸川純というのは、当たっているかもしれませんね。懐かしい名前です。一般的には、まだ本格普及前のウォシュレットのテレビCMで、タレント的に有名になりました。
伊藤 「おしりだって洗ってほしい。」ですよね。戸川純のキャラクターとこのキャッチコピーは抜群でしたね。お茶の間にとっての衝撃でした(笑)。
2014.09.14(日)
文=山口哲一、伊藤涼