きゃりーぱみゅぱみゅのダークサイド的存在
伊藤 さて、大森靖子に話を戻しますが、彼女は本質的にはアイドル(昔ながらの)じゃないので、作詞作曲も自分でしています。内容もかなりエッジが効いていて、歌詞なんかはキワどい言葉が飛び交って面白い。楽曲、歌詞、歌を総合すると、イメージ的には“パンクアイドル”なんですけど、存在的には、きゃりーぱみゅぱみゅのダークサイドですね。
山口 きゃりぱみゅは海外で大人気ですが、大森靖子に海外のJファンがどんな反応をするのかは興味深いですね。ファッション性やアレンジの展開など、受ける要素は十分にあると思います。
伊藤 ですよね。それとクリエイティブ面でいうと「連れてってよ ググってでてくるとこなら どこへだっていけるよね!」なんて歌詞を書いたりする。センスありますよね、カッコイイし。
山口 そうですね。そんな歌詞から、どんな妄想が浮かびますか?
伊藤 今日から伯父さんの家にお世話になることになっている。駅まで来たがあるはずの迎えは一向に姿をみせない。どうせ一本道だ、陽がくれる前に自力で伯父さんの家に向かうことにする。駅で知り合った老人と交渉して、伯父さんの家の近くまで馬車に乗せていってもらうことになった。
あまり舗装されていない道を2時間ほど馬車に揺られ、ひたすらに遠退く景色を眺めている。突然、紫色の風が背の高い草をザワザワと揺らし、何かを知らせる。すると、赤いワンピースをきた女の子が、草の中からあらわれ、馬車の後を走ってついてくる。僕と同じ10歳くらいで、小柄だけどしっかりした顔立ち。なんとなく南部の血を感じさせる。裸の足を素早く交互に前に出し、時折草の中に入ったり出てきたり。
女の子は声には出さないが、たまにこっちを見上げ瞳で話しかけてくる。「どこから来たんだ」「どこへいくんだ」「どこの身内だ」。僕も瞳で答える。手綱をにぎった老人は居眠りをしている。女の子は疲れというものを知らない様子で走り続ける。そして今度は力強くこっちを見上げると、また無言で「こんどうちに遊びにこい」。そう言うと、また高い草の中へ、黒くなり始めた紫の風と共に去って行った。
山口 コミックに触発されて純文学作家が書いた小説みたいな「妄想分析」ですね。
大森靖子「きゅるきゅる」
エイベックス・エンタテインメント 2014年9月18日発売
CD1,000円、CD+DVD3,500円(税抜)
■このシングルで待望のメジャーデビューを果たす大森靖子(おおもりせいこ)は、2012年からインディーズでの活動を開始したシンガーソングライター。13年発表のセカンドアルバム『絶対少女』は、カーネーションの直枝政広がプロデュースを手がけた。
■「きゅるきゅる」作詞・作曲/大森靖子 編曲/デワヨシアキ
■オフィシャルサイトURL http://oomoriseiko.info/
【動画サイト】
「きゅるきゅる」
URL https://www.youtube.com/watch?v=1qlEeVS2vMU
2014.09.14(日)
文=山口哲一、伊藤涼